
第一部
試合開始
6
そして・・・。
「はい、続いて、本城一!本城一!」
とうとう一の名前が呼ばれた。――――くそっ!やっぱり夢じゃないな・・・どうしよう・・・――――
しかし、一の足はすいすいと鬼月に引き寄せられるように
歩き始めた。何度生唾を飲み込んだだろうか・・・息もなぜが切れていた。村瀬がここ(教室)から出て、何分経ったのだろうか。
すいすいと鬼月の所まで行くと、なにか障害物があるように、その場で一の足が止まった。
「さ、合言葉を言え。本城」
目の前には、少し不良っぽい顔で、髪が茶髪の男が冷静な目で一を見ていた。しかし、一自身言っているつもりはなかったが、
自然と「私達は・・・」と、出ていた。
俺は何やってるんだ・・・。そんな事を思いながら、鬼月が一にデイパックを渡した。
ドスンと、少し重みがあった。いや、これは少しどころじゃない。今にも
その場で体が倒れてしまいそうなくらいに重い。この重さは「プレッシャー」なのだろうか。
自分の武器はなんなんだろう・・・。不安と変な期待感を抱きなら一は教室から出た。そう、期待している。不安の
裏側にはいつも期待が飛び跳ねながら待っていた。運動会の時もそうだった。徒競走で自分はビリにならないだろうかと
不安を抱く一の中に、期待に胸膨らます自分がいたことを思い出していた。あの時と同じ感じだと・・・。
出て行く際に後ろを振り返り、「僕はゲームに乗ってないからみんな安心して」と笑顔で言いたかった。
だがそうもいかず、一も樹や敬二同様に、一度も教室を振り返ることなく廊下に出て行った。
廊下には5、6人の専守防衛兵士が窓際に整列して立っていた。
窓は鉄板らしきもので塞がれていた為、兵士の後ろは全て真っ黒で何も見えなかった。
一は静まりかえった廊下を少し
早歩きで通った。見て見ぬふりをしてる人間のようだ。
まっすぐ進むと、数メートル先にボロボロの木のドアが開いていて、一ちゃんいらっしゃい、ここが殺人ゲームのゲートよ。と、言わんばかりに、
待ち構えていた廃校の出口があった。少しずつ近づいて行くと、右側にギラギラ光る灯がもれている部屋があった。誰か居るのか?
まるでその部屋は、自分を待っている部屋のような感じに襲われた。だが、そこには決して入ってはいけない。
もし入ると・・・。
一はドアの方に歩きながら、チラチラその灯がもれている部屋を覗いた。中には、鬼月などと一緒にいたような服装の専守防衛兵士達8,9人と、
白衣を来た人間が3,4人、なにやらパソコンらしきものや、大きな装置の側に立っていた。
今の時代、パソコンという機械は一にはめずらしい物だった。中にはタバコを吸ってる兵士もいた。タバコは吸わないし好きじゃないが、
その時ばかりはその吸っている光景が羨ましかった。
もう少し見ていたかったが、今の一にはそれより大事なことがあった。そう、この先にあるドアを出た次の行動を考えていた。
いや、既に決まっていた。確かに、考える暇はいくつかあったんだ。決まっていてもおかしくない。ただ行動を考えるだけ、殺し方なんて考えはしない。絶対に。
その行動とは、仲のいい影野樹、野ノ久敬二に会う事だった。
まず敬二の事が気になった。出て行く際に一度も
教室を見ようともしなかったし、はきはきと合言葉を言っているのを見ると
、既にゲームに乗ったのかと見えた。だが、怖くてそんな余裕がなかったと
言うのも考えられた。
もう一つは、樹の事だ。
一は、樹に不安を抱いていた・・・。
樹は教室を出るとき、いつもの表情と何ら変化がなかったのだ。たしかに樹はあんまり感情を表に出さない人間だけど、
怖がっている顔や不安な顔一つ窺えなかったのだ。たとえ樹でもなんらかの表情はするはず。いや、空気ってものすら感じない。
まさか、樹はこのゲームに乗ったのか?うそだろ・・・。意外に怖がりなんて言わないでくれよ・・・。意外に殺しが好きなんて言うなよ・・・。
いや、樹はそんなバカで単純な奴じゃないはずだ。なんとか樹と敬二に会って、そして一緒にこの島から逃げ出す方法を考えよう。きっと
樹、敬二となら・・・。そう一は思っていた。
すうううっと、開いたドアから一の体に冷たい風が当たった。ザッ、と言う音をたて、一はドアの外に出た。見た感じ暗い。その通り、腕時計
の針は、11時を指していた。これでは全く何も見えないと思ったが、島の所々に不気味なぐらいぼぅっとしたスタンドライト
らしき物が立っていて、すべてが真っ暗な訳ではなかった。
そしてまず最初に、一は近くの草陰に身を潜め、支給されたデイパックの中身を見た。なにが・・・一体なにが入ってるんだ・・・。
中にはたしかに鬼月の言ったとおり、1リットルペットボトルの水が2つ、そして、給食で見たことあるコッペパンらしきものがビニール袋に2つ、
それにこの島の地図らしき物と、方位磁石、腕時計が入っていた。
どれも、この国、大東亜共和国のシンボルマーク、金の桃のロゴが入っていた。パンなんて実際パンに桃のマークが焼印されていた。おえっと吐き出しそうだ。
これが入ってる事は鬼月が事前に言っていたから分かっていたが、一人一人違う武器、と言う物がまだなんなのか分からなかった。
と、デイパックの一番下に、細長い茶箱が目に入った。
まさか・・・。心臓がバクバクと鳴っているのが分かった。
一は確信しながら、茶箱のフタを開いた。――――やはりそうだ――――銃だ、それも拳銃ではなくて、長い、ライフルの様な物だった。そっと、指先で銃に触れた。
ひんやり冷たいが、その銃の横に小さな手帳サイズで2ページほどの説明書が入っていた。まず一の目に入ったのは銃の名前だった。"ファマス5"と聞いた事もない
銃の名前が書かれていた。その下には"種別:ライフル"と書かれてもいた。
ラ、ライフル?一は驚いた。普通の拳銃でもドキドキするのに、まさか自分の支給武器がライフル銃なんて・・・。
しかし一は説明書を全て読み、自然とライフル銃の弾を詰め始めた。
この時だけは、勉強を嫌というほどしておいてよかった。おかげですいすいと
頭に入っていく。と思った。
なぜ、自分がこんな事をしてるか、今はなんとなく分かっていた。
"自分の身を守るため"それだけだった。他に使う時は絶対ないだろうと。
一はライフルの弾を詰め終わると、肩に重みのあるそのファマス5を背負って、地図を見て場所を確認し、
それを制服の右ポケットに入れ、北の方の集落がある場所に向かった。
【残り38人】