
第一部
試合開始
7
静かな夜に、キラッと光る"物"を持つ人間が、廃校の近くでいた。それは暗闇に十分な
ほどの光を放っていた。
支給された武器のサバイバルナイフを持って、一人の少女、メガネをかけたストレートヘアーは、クラス1髪の長い真行寺文香(女子十一番)よりかは短かったが
、女子の中でも長めの方だった、石上晴香(女子一番)が"何か"に向かって歩いていた。晴香は廃校を出る順番が
わりと前だった為、廃校の近くの林に身を潜めた。いや、最初は怖がって泣いていた。だがいつもの、強気の自分を取り戻し、
気に入っている小説の一部分を思い出した。
その中の主人公である少女が、こう言うのだ。
――――がんばれ私。負けるな私。今出来る事をやってこかないと
絶対後悔する。そうよ、私は強いのよ、誰にも負けない精神力があるじゃない!――――
そうすると自然に怖がっていた何かが薄れていった。落着いた晴香はデイパックを開け、武器となるモノを発見した。そして、
廃校から出てくるクラスメイトを殺す提案を独りで立てた。つまりは待ち伏せ作戦。なんて私は頭がいいのか。
実際、晴香は成績がいいのだが、昔から体育や社会だけは不得意だった。
そして今、廃校の入り口が見えるところまでもう少しの時だった。晴香の思考が不意に何かを感じた。それは現実に見えるものだった。
――――人間――――本能が叫び、次第に晴香の足は向きを変え、そちらに後ろから忍び寄っていく。
一方、「ザッザッ」と林の中を歩く、手に包丁を持った少女がいた。
童顔で有名、しかもかわいい顔コンテストなら絶対負けない自信がある、
ショートヘアーでどこかのファッション雑誌に見るような、異常に長い
耳周辺の髪が特徴的な、牧野つくし(女子十九番)は、後ろから来る小さな足音に気づいていた。そしてつくしはゆっくり後ろを
振り向いた・・・。
暗い視界でポツポツと立っているスタンドライトの中、メガネをかけ、手にはサバイバルナイフを持った少女がつくしに近づいて来ている事がわかった。
メガネと髪型で、すぐにそれが誰だか分かった。
――――晴香?――――今つくしは誰か友達に会って共に行動できる人物を探していた所だった。
しかし、晴香が手に持ってる物を見つけて次の行動が選択された。
ナイフ?つくしは急に目の前の全ての物が怖くなった。もう、ゲームは始まってる・・・。仕方ないってこんな時使うのかな・・・。
そして、ある一言がつくしの頭をよぎった。
――――殺らなきゃ、殺られる――――
そう、相手が誰であろうと既にどうでもいい。
相手は武器を持ってる。はぁはぁと、
つくしの呼吸が乱れ始め、ついに何かが途切れた。殺す・・・殺す・・・殺す!!コロシテヤルーー!!
そのつくしが振り返り、後ろから襲おうとしていた晴香と目と目があった。それを見て晴香も驚いた。自分は襲おうとしていたのだが、
相手がつくしと分かった瞬間、晴香は戸惑った。同じバレー部で仲良しのつくしなのに、手には包丁が握られている。つくし・・・あなたも。
だが晴香も同じ様に、「殺らなきゃ、殺られる」の言葉が頭をよぎった。晴香は今の状況上、頭が混乱していた。
そして、つくしと同じ様に、何かが破裂した。
――――殺してやる!!殺してヤル!!――――
殺気立つ二人は相手の目を見つめながら、いや、睨めながら何も喋らずゆっくり、ゆっくりと真横に歩き始めた。まるでその場をグルグル回る様にして
2人は何かの合図を待っていた。
そして次の瞬間、ゴングが鳴り響いた。一瞬だけ風が「しゅううううう」と、強まったのだった。
「ザッ!」と2人同時に走り始めた。2人ともスピードは落ちることなく、もはやこの戦いはどちらが強いとかではなく、寧ろタイミングが
勝利を手にする方法だった。
「はぁ!」
先に攻撃を受けたのは晴香だった。つくしの包丁が、サバイバルナイフを持ってる晴香の手首に深くヒットした。いや、正しくは晴香の方が
攻撃をしたのが先であったが、攻撃はつくしの体から的を外していた。つまり的外れだった。
手首を切られた晴香は、つい手の力が弱まり、手からサバイバルナイフを落としてしまった。
急いで落ちたサバイバルナイフを反対の手に掴んだが、その瞬間、つくしの包丁が晴香の腹に飛んできた。勢いあまって2人は
飛び転ぶようにして地面に体を打ちつけた。
「グサッ!」
その時なんとも聞いた事のない卑劣な音がした。肉を切るのではなく、中に刺し込む音というのだろうか・・・。
攻撃を受け、重傷の晴香は既に意識が薄れかけていたが、最後の力を振り絞り、手にサバイバルナイフを持ち、つくしに刺そうとしたが次の瞬間、
腹に刺さった包丁につくしが力を入れ、「ぐちゅ」と晴香の腹の奥深くに入った。
「うぶっ」と、口から紅い血が吹き出た。晴香は痛みを堪えながら蹲った。
手には血。血・・・血・・・。一瞬晴香の頭に、クラスメイトの顔ではなく、読んで感動した小説の題名が無数に横切った。
そして、晴香の、全身の力が抜けた。
つくしも気がついた時は、これ以上は刺せないと言う位、包丁の柄の部分まで刺していた。こんなに力があったなんて。
私って案外筋肉質かも・・・。
正気を取り戻したつくしは晴香に刺していた包丁をすばやく抜き取った。抜き取る時も晴香の顔は見なかった。
「ぐしゅ」と鈍い音と共に、晴香の体が仰向けにバタンと倒れた。目が見開いており、まるで人形の様に死んでいた。
殺したの?私が?・・・うそ・・・。すごい冷たい何かが、つくしの体中に染み渡り、フラフラになりながらも、走って闇に消えた。
晴香の「提案」は、残念ながらも運命に却下された・・・。
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