[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

BATTLE ROYALE 外伝

第二部
中盤戦



21

 玄関にいた人間は既に両手を挙げており、腰のベルトには銀色に光る銃が見えた。
 「あっ」と真司は顔を見て分かった。向こうも「あっ」といい、敵ではない事を両者それぞれ確認した。
 背はそんなに高い事はなく、真司と略同じぐらいの168センチの身長、その妙に左の前髪だけ垂れていて、右の前髪はオールバックのように上げていて、すこし広めのおでこが見える人間。それは正しく 影野樹(男子四番)だった。樹はなにやら左右の昌二と匠に気づかなかったらしく、驚いた顔をしている。
 「樹!樹じゃないか!」
 右側にいた匠が樹に近寄った。昌二と匠は既に樹に向けていた銃は下に降ろしていた。だが真司だけは、何故か銃を樹に向けたまま降ろさなかった。 それは自分でも分からない、なにか昌二と匠以外の"部外者"として見てしまったからである。今の真司にとって、本当の友達は 昌二と匠の2人だけだった。
 「真司!銃を降ろせ!お前仲間を撃つ気か!」
 ずっと銃を樹に向けたままの真司に、匠の強まった声が玄関で響いた。
 仲間を撃つ!?真司も自分では分からなかった。ただ、なにをされるか分からない不安から銃は降ろさなかった。
 「・・・影野には悪いが、今の俺はすべてが不安定なんだ。悪いが銃は向けたままにさせてもらう・・・すまない」
 真司が静かに言うと、樹は手を挙げたまま少し微笑み、2,3回頭を縦に振ると、「謝る必要はないさ・・・伊藤が疑うのも無理ないさ・・・ それが普通なんだから。俺は用事があるんですぐ帰るよ」と言って、真司を見つめた。
 「みんな天美・・・いや、神楽天美を見なかったか?」
 樹は落ち着いた様子で訊いてきた。「いいや」と匠が言うと、「僕も」と昌二が言う。真司も勿論頭を横に振った。
 「そうか」と、少し残念そうな顔をしていた。そしてそれだけ訊くと樹は両手を挙げたまま、後ろを振り返り玄関から出て行こうとしていた。
 「影野!ちょっと待ってくれないか?」
 咄嗟に真司が樹に声をかけた。なんでもいい、手がかりを掴もうと諦め混じりに訊いてみた。
 「影野・・・どこかで・・・パソコン見なかったか?」
 樹は真司の声にすぐに振り向き、「ああ、見たよ」と一言言った。真司ほどではないが、樹もパソコンの事には詳しい。いや、すぐにパソコンの 技術を覚えていた。だがやった事はなく、知っているのはやり方や情報だけだった。
 「本当か!?」
 右側にいた匠が喋ったが、同時に真司も「な・・・どこで!?」と言っていた。
 眉を歪めながら樹は「えっと、確か農協の事務室だったな」と頷きながら言った。
 まさか、本当にあるとは・・・真司に1つの希望が出てきた。さらに樹は後付けする形で喋りだした。
 「あそこは自家発電があるらしく、俺が昨日の夜行った時に普通に電源を付けたら、事務室の部屋や他の部屋の電気もついたよ。 ああ、あとパソコンは少し使わせてもらったよ。やはり伊藤じゃなきゃだめみたいだ・・・俺ができたのはパソコンに内蔵されてるゲームみたいな、 初歩的な基本操作だけだった。 パソコンはかなり新しく、大東亜ネットに接続する設定はされてなく、外界との接触を絶たれていて、ローカル通信ならやった履歴が残ってたよ」
 昌二と匠にはほとんど分からなかった話だったが、真司には十分理解できた。真司は驚いた。自家発電まで・・・。これはある意味すごい事だ。 真司は樹に質問した。聞いてみたい事は山ほどあったが、本当に必要なことだけを訊いた。
 「そうか、影野・・・さっきお前ローカル通信なら履歴が残ってるといったな?と言う事はこの島のどこかにもうひとつパソコンがあると言う事か?」
 「ああ、そうだろう。俺もあまりよくは調べてないが、履歴を見ればどこに通信したのか分かるはずだろう?」
 この島は少し進んでいるのか?真司は思った。これならできる!脱出できる!鬼月たちが、俺達が今何処でなにしてるのか分かり、尚且つこの島の電力が 止められているのなら、あの廃校のパソコンと通信できる可能性は大だ!あの廃校だけ電波がガンガン飛んでるからな。今に見てろ! 真司は樹に感謝した。場所が分かればそこに突進するのみ。すると今度は樹が真司に質問してきた。
 「伊藤・・・お前やるのか?ハッキング作業・・・」
 真剣な眼差しで真司ははっきり答えた、「ああ、やる」と。それを見て樹は眉を少し歪めて言った。樹は否定しなかった。
 「きっと困難な作業だぞ。 ハッキングの確率は0.01%にもならないかもしれないぞ。それでもやるのか」
 真司は分かっていた。いくらパソコンができる自分でも、ハッキングの難しさを。しかし諦めたりはしなかった。仲間の為、自分の為に 死ぬ気でやると。それを樹に簡単に伝えた。
 その言葉を聞いて安心したような表情を見せた樹は、ある不思議な事を言って立ち去った。
 「よし・・・伊藤がその気なら俺もやるよ。伊藤に会えてよかったよ。俺一人だけ脱出方法を考えているのかと思ってたからな。俺と同じ考えの人間がいてよかった。 俺は準備ができ次第実行する・・・それじゃあ俺は行く所があるんで・・・」
 そう言うと樹は走るようにして家から出て行った。一瞬であるが、樹の額に薄っすらと汗が浮き出ているのが見えた。一体最後の言葉は何だったのだろうと真司は考えた。
 『俺と同じ考えの人間がいてよかった』
 この意味はなんなのだろうか?まさか自分と同じ様にハッキングか?いや、影野ができるんならとっくにやってるだろうな。 他の脱出方法があるって言うのか・・・。真司はとにかく今は既にいない樹に感謝した。――――ありがとう――――
 昌二と匠は出て行った樹を玄関から見送っていた。しかしとにかく真司には急がなきゃならなかった。樹の言う事を信じて、 パソコンがある農協の事務所まで、かなり急がなきゃならない。ハッキングのさまざまなプログラムを作成するのには大変苦労する。いや、ハッキングなど 一度もやった事ないが、とにかくそれしか方法がないのだ。だから早く農協に着き、急いでハッキングに取り掛からないと、 どんな部外者が農協に入ってくるかも分からない。実際敵でも戦闘は控えたい所だ。
 真司は2人に声を掛け、荷物を持ち農協に急ごうと言った。勿論と2人も賛成し、家の玄関から出て行こうとしていた。
 真司達はなぜか手を組み合い、昌二が「僕達はいつも一緒だよね」と言うと、続いて匠も「ああ、死ぬときも一緒だ」と言うのを聞き、 真司も「必ず脱出しようぜ」と言い、最後に全員で「おおー」と試合直前の選手のように掛け声を掛け合った。
 ふっと何時かと、真司は腕時計を見た。チックチックと針を刻み、12のところを針は過ぎた。      

【残り29人】




次へ

トップへ