BATTLE ROYALE 外伝

第二部
中盤戦



31

 星が幾つも輝くこの島で、何が出来るのだろうと思いながら兼光は歩いた。
 時計の針は既に10時を回っていた。この時間、もしかして人間と人間の殺し合いが島のどこかで繰り広げられているのだろうか。徐々に減っていくクラスメイトを他所に、 頭に牧野つくしの笑顔が出てきた。なぜだろう、牧野をなぜこんなに思ってるんだ?今はそんな時ではないはずだ。1分1秒を大切にしなくては・・・。
 一応食料や物の調達と言う事で、兼光は診療所からデイパックとスナイパーライフルG3だけを診療所から持ちだして、まだ明るいうちにD=7の雑貨屋を目指し歩いた。
 いつまで待っても何も始まらない気がした兼光は行動を起こした。自分ができる事、それは友達を見つけ、そして今持ってるスナイパーライフルG3で・・・。
 雑貨屋で何か脱出に役立つ物はないかと向かっていたのだが、案の定道程は激しく長い。地図で言うとそんなに離れてないようにも見えるが、雲がでていた青々 とした空は、今は既に真っ暗な空になっていた。
 目の前には無数に広がる、無人のスタンドライトが立っていて、夜の静けさを漂わせるように光を放っていた。視界には困らなかったが、何かが動く音は いつもの何倍の音にも聞こえる。風で葉っぱが揺れる音。歩く自分の足音。そして錯覚とも聞こえる何かの悲鳴。
 その時であった。兼光の目の前に一つの店が見えてきた。疲れている足を無理に走らせ、警戒しながら店の中に入ろうとした。だが、店の入り口付近で何かの 物音がする。いや、風で揺れる音ではなく間違いなく人が物を漁ってる音だ。しかもガラス戸からは光が洩れている。とすると中には電気が付いているのか?
 このまま引き下がるのか・・・。もしかするとここが雑貨屋かもしれないし、中にいるのが真司や忠文かもしれない。しかしもし相手が殺る気の人間だとしたら、 遠距離向きのこのスナイパーライフルG3だと、とてもじゃないが戦えない。
 何をそんなに駆り立てたのだろうか、興味本意か?それとも予知か?店の中の光に引き寄せられる害虫のように、兼光は意を決してガラス戸を開けた。
 「がらららら」と、静かな島の中で一際目立つ音を出して戸は開いた。そしてその中の人間に、兼光は銃を向けられている事と、それが誰なのかに逸早く気がついた。
 スナイパーライフルG3を持ってるのにも関わらず、その銃を自分に向けてない事から、殺る気の人間ではないと思ったのだろうか、兼光の目に前にいる 銃を構えていた人間は、唖然とした口調で言ったのだった。
 「武藤・・・・」
 「影野か、ど、どうしたんだ?」
 兼光に向けていた銃を降ろすと、樹は「ちょっと、いいから早く戸を閉めろ」と焦っていた。樹曰く、殺る気のあるない人間ともかく、自分の身を守るために 行動してる奴らには、このように外からでも分かるように電気をつけておくと、逆に相手が人がいることに警戒して中には入ってこないと言う事なのだ。兼光は 手短に樹に話を聞きくと、ガラス戸を閉めた。閉めて分かった事だが、この店はなぜが外より暖かかった。
 「ふう、殺る気はないんだな」
 「ああ、影野がその構えてた銃を発砲しない限りな・・・」
 お互い、話交わさない方だったが、何度か話をした時には趣味や勉強の他の、何か脈が合った。だからお互いに信頼感は多少あった。兼光は 本題と言うのだろうか、樹にここが雑貨屋さんなのかと聞いた。見た感じ前、左右に棚があり、そこにはさまざまな物が置いてあった。
 「影野、ここは雑貨屋なのか?」
 「ああ、地図で見たがここに間違いはない。武藤も何かここに用なのか?」
 「まあな、ちょっと調達ってとこよ。もう何時間も歩いてやっとここに辿り着いたからな」
 「一体何処から来たんだよ。ここは結構目立つぞ」
 「診療所から来たんだよ。ここまで距離が長いのか短いのかあまり分からなかった。地理は得意じゃないんでね」
 樹は目を丸く点にしていた。「随分と長い距離を歩いたな」と、驚いた表情も見せた。
 それから樹は片手でデイパックの中から一つの地図を取り出し、兼光に話し掛けてきた。何か急いでるようにも思えたが、やはり樹の顔は冷静に包まれていた。
 「武藤、俺は実際の事を言うとこの島から脱出しようと考えてる。お前はどう考えてるんだ?これからの行動・・・」
 「脱出か、俺も少しは思いついたが良い脱出方法が思いつかなくてね・・・。だからまずは仲間を集めようと思っているんだ」
 少し自分が動揺した事が分かった。それはきっと樹は目標を持っていて、自分は曖昧な目標だったからだろうか、元々サッカー部でも一番の負けず嫌いで 勝つ為にはどんな努力もしてきた方だ。
 「まあ実際何がしたいのか俺も内心分からないんだ。ただ今を一生懸命生きてる・・・そんな感じかな」
 樹は兼光の言葉にうんうんと頷き、ぼそっと「武藤、それだったら、俺と一緒に脱出の手伝いをしてくれないか?」と樹は静かに言った。
 「手伝い・・・?何をするんだ?」
 大体脱出の方法も教えてもらっていない兼光は少し疑いながら訊いた。でも頼りがいのあるその樹の顔に負けた。
 「俺の脱出方法は言えない。まだな・・・。でもきっとこの島から脱出できると信じている・・・。実際の所伊藤も脱出をしようとしている・・・」
 「真司が?あいつも考えてるのか・・・」
 「そうだ、伊藤だけじゃないかもしれない。クラスメイトの中にも頭の冴える人間はたくさんいる。しかし今は自分の事で誰もが精一杯だ。頼む。 出来るだけでいい・・・武藤の力が今はいるんだ・・・」
 突然樹はお辞儀をして、兼光に脱出の手伝いをしてくれるようにお願いした。突然の事で少々おろおろした兼光だったが、正義感というのか、そんなものが 沸々と湧き上がり、「俺でできる事なら・・・やるよ」と一言言った。
 「あ、ありがとう。武藤がここに来てくれて助かったよ。本当に俺には時間がないんだ。手短に言うがいいな?」
 「ああ」
 そう言うと樹は取り出した地図を雑貨屋の中にある小さなまな板にそれを置き、自分も座った。兼光も樹と同様に座り、まな板に置かれた地図を見た。
 「なんだこれ・・・」
 兼光が見た地図は、自分が持っている地図よりももっと詳細深く、様々な所が記されていた。大事な場所は勿論、小さな自分が持ってる地図にはない、 灯台や志高団地などまだ見ぬ場所があった。
 「これは農協で手に入れた地図なんだ。支給された地図は安易に作られていて、大まかにしか記されてない。それとは違いこれは普通にこの島で使われている 地図だから、細かな場所が記されている。いいか武藤、お前のその武器、多分スナイパーじゃないか?」
 「ああ、当たりだ。しかし普通の銃のように近距離には向いてないらしく、説明書にも遠距離用と書かれていたよ」
 「それでいい!スナイパーがあれば・・・ここを見てくれ」
 樹が指差したのは地図の中心側で、廃校に近い所に書いてある山岳と記されている所だった。
 「ここがどうかしたのか?」
 「ああ、ここの山岳地帯はまだ禁止エリアに入っていない。安易地図で言うとF=5の所だな。そこから廃校は見下ろせる。そこで武藤のスナイパーが 役立つ」
 しかし突然何かに感づいたように樹は話をやめた。どうしたと兼光が聞こうと思ったその時に、いきなり地図を裏返して、胸のポケットから一つのマジックを取り出し、 裏面で白紙になった地図に何かを書き始めた。
 『いいか、まず言うが、俺達の話はあの政府がいる廃校にまる聞こえだ』
 いきなり何を仕出かすのかと思い、その文字に驚いた兼光も自分が持っていた赤鉛筆で応答した。
 『聞こえてるって?』
 その文字を見て樹も更にマジックのペンを走らせた。
 『つまりは盗聴だ。俺の予想だが考えた結論上、この首についてる首輪には盗聴器が入ってる。 それで俺達やこの島にいるクラスメイトの会話は廃校の政府たちにまる聞こえだ』
 『うそだろ?』
 『俺や他の奴が脱出方法のやり方を声にして言ったとしたら、その方法を阻止しようと政府はやるだろうな。そして何かまずい事があれば爆発 させるつもりだ』
 『分かった・・・。それでさっきの続きを言ってくれ』
 『いいか、まず山岳地帯に行き、廃校が見渡せる所に行くんだ。それからそのスナイパーを撃て』
 『どこに?』
 『廃校の前に止まってるヘリにだ。ヘリは後部にガソリンのタンクがある。そこに何発か命中させれば、ヘリは爆発する。それでまずは廃校にいる 政府らに一泡吹かせる。そしてその間に俺がガスを積んだ車を同じところから突っ込ませる。そうすれば急な坂だから車のスピードは少し速くなり、 廃校に突っ込ませてドカンだ』
 驚いた。樹の考えはまるで始めから考えていたようだった。兼光は返す言葉がなく、ただ『OK』と書いた。
 「よし、それじゃあ現時刻はおよそ11時だ。0時にまた鬼月の放送がある。それまで待とう。行動はそれからだ」
 「わかった」
 付け足すように、樹はその場から立ち上がり、棚からプラスチック製の双眼鏡を取ると、ガラス戸越しに双眼鏡を覗かせた。なにか探してるようにも見え、 後姿がなんとも切なかった。
 「武藤。本当は俺にはまだやることがあるんだ」
 「やること?」
 樹は兼光に背を向けたまま寂しそうな様子で話し始めた。
 「ああ、約束したんだよ・・・天美とな。俺は天美を守ると約束した。だから俺はこのゲームが始まってから、必死に天美を探した。でもなかなかそう簡単には 見つからず、どんどん時間だけが過ぎて行った。もう少し、もう少しという時に限って鬼月の放送があり、次々に死亡者が発表されていく・・・。そのたびに俺は 天美が死んでいないかドキドキしていた・・・」
 天美と呼ぶその女は、神楽天美の事だと兼光は思った。神楽天美はクラスの中でも変った名前だったので、名前だけは有名人だった。そのためいじめられたりしていた 事はクラスでも有名な話だ。寂しそうな樹に何か励ましの言葉を掛けてやろうと思い、頭の中に浮かんだありとあらゆる慰めの言葉を集めて言った。
 「心配するな・・・きっと生きてるよ・・・きっと・・・。俺も手伝うから、そんなに落ち込むな影野」
 その言葉に少し勇気付けられたのか、樹は「ありがとう」と一言言ってそっと目を閉じた。しかしまた落ち込んだようにして、雑貨屋の隅にあった凭れ所がない 椅子にちょこんと座った。
 「影野・・・今からは探さないか?」
 「言ってる事が違うじゃねえかって思うかもしれないけど・・・こんな夜は危険だ・・・。やっぱり本心自分の命って物は大事なんだ・・・」
 「そうか・・・」
 兼光も本心こんな暗い時に探すのは、自分を殺してくださいと言ってるようなものだと思った。少し新たな目標を持った兼光はその場で立ち上がり、 棚に並んでいたお菓子を取り、袋に入っていたコーンスナックを開け、口に一つ二つ放りこんだ。「影野、どうだ?」と兼光は気を利かせて言ったが、 樹は頭を左右に振るだけだった。
 その時だった。ほんの静かな雑貨屋に、がららららと音が少し鳴った。その瞬間、兼光と樹はすぐに反応して銃をガラス戸に向けた。――――誰か来た!――――
 やはりガラス戸の向こうに、人影が見える。兼光が見た限りでは一人・・・。そしてガラス戸はゆっくり開く。両者物凄い警戒心を持ち・・・。
 「あ・・・」
 ガラス戸から体を除かせて分かったのはセーラー服だった為女と分かり、次に顔を見せ、樹が叫んで誰なのか分かった。
 「天美!」
 「・・・!樹?」
 開いたガラス戸にいたのは正真正銘樹が探していた女で、少し驚いた顔をした神楽天美(女子五番)だった。天美は樹の顔を見て、すぐに抱きついていった。何か自分がここにいてはいけない ような雰囲気の中、兼光はそっとガラス戸を閉めた。
 樹はまずごめんと天美に謝った。しかし天美もううんと頭を振った。凄く嬉しいようだ。その間兼光も何故か牧野つくしの姿が頭に浮かんだ・・・。
 よくよく天美の話を兼光と樹は真剣に聞いた。つらくて自殺しようと思ったと言って、自殺用(?)のデザートイーグル9oを目の前で見せた。それから 朦朧と樹を探して歩いていたらしく、死のうか生きようか考えてる間に、なぜかこの雑貨屋の光に導かれて辿り着いたと言った。
 安心したのだろうか、男2人の目の前で大きな腹の音を鳴らした天美は、恥ずかしながらも樹から棚にあったジャムを渡され、自分のデイパックに入ってた パンにジャムをつけて食べた。聞いた所によると、天美は丸一日食事は摂ってなかったそうだ。
 2人が和やかに話す中、兼光は持っていたスナック菓子をバリバリと食べていた。食わなきゃやってらんねー。
 樹はとりあえず天美に脱出方法の事を書いた地図の裏面を静かに見せた。それで少し分かったのか、天美も声には出さずこくっと頷いた。
 落ち着いた雰囲気の中で、またしてもあの恐怖の声が何処からともなく響きわたった。

【残り25人】




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