BATTLE ROYALE 外伝

第二部
中盤戦



33

 大きな銃声は闇と共に消えていった。ただの肉の塊と化した真行寺文香の死体は、静かに目を閉じていた。先ほどの気持ちはなんだったのだろうか・・・。
 死にそうな人間の気持ちが分かったような気がした。ダブルイーグルに弾を詰めると、先ほど永井依子が逃げた坂を神山克人(男子五番)は見つめた。
 あいつを逃がすわけには行かない。真行寺さんの思いは伝わった・・・。
 克人は坂を走って登った。急な坂で、一旦下りると下からは上がれないようになってるらしく、斜面が急だ。しかし諦めずに足を踏ん張り砂を蹴り、 何とか登る事が出来た。克人には気がついていないが、バスケをやっていただけあって、足の筋力が活かされた。
 直ぐに辺りを見渡すが、スタンドライトだけが置いてあり、誰もいない。
 神社の先に誰かが倒れていた。少し警戒しながら近寄ると、そこには村瀬淳也の死体が転がっており、首に矢が刺さり、醜い顔で死んでいた。放送によると既に何十時間も前 の事だ、死体が腐りかけている。手や足がシワシワになっていた。
 それはともかく、克人は辺りをもう一度見渡した。永井依子・・・撃つ。
 あの坂の出来事はどう見ても永井依子が仕掛けたものだと判断した克人は、文香の事を思い出していた。
 丁度3年のキャンプの時だったが、夜にばったりテントの外で2人して星を眺めるだけだったが、今でもよく覚えている。
 そっと空を見上げてみた。ぼんやり照らす無数のスタンドライトがなぜかキャンプファイヤーのその場にいるような錯覚が起きた。
 空には無数の星が輝いており、引き寄せられそうな感じになった。だが、今は星など見てる暇はない。
 ゲームが開始してすでに何十時間と時が経っている。このゲームが開始された時はやっぱりと思った克人だった。
 それは父が政府と関係を持つ仕事上で、極秘の秘密としてプログラムの選ばれる学校をいくつか知らされる。克人の父は普段から何日も帰ってこないことが 日常茶飯事だったが、ある中学2年の時、父の自分に接する感じでなんとなくわかった。
 プログラムの結果が報告されるニュースなどを見て、「克人、もしプログラムに選ばれたらどうする」と言う質問を幾度となくされた事もあった。
 すぐにでも逃げ出したいぐらいだったが、逃げればどうなるかぐらいは分かっていた。すでに予想していたと言うよりも、結果を知っていたと言った方が正しい。
 しかし3年の何時プログラムが始まるか分からない。寝てる間に拉致されるかもしれない。そのために2年の内に様々なサバイバルの事を勉強した。
 父も納得して、できる限りの事はしてくれた。実際に盗んできてくれたプログラムの資料などは、結果的に役立った(銃の使い方など)。
 しかし3年になって父は行方不明になった。いや、きっと殺されている。
 そんな大人たちが支配する大東亜共和国に生まれ育った克人は決して恨むことはなかった。
 一発いつか痛い目にあわすのが楽しみだった。自分だけではない、この世に不満を持つ子供達はいつか我慢して大人になった時に、政府に仕返しを するだろう・・・。それまでの辛抱だと思ったが・・・俺はその仕返しは出来ないかもしれない・・・。
 なんたってこのプログラムに選ばれたんだから。内心脅えてる克人は決意を固くした。
 こうなれば短い時間、精一杯生きてやる。何処まで生きれるか・・・これは自分に宛てられた、挑戦状だ。
 ふわっと来る風に、今までの思いを流すようにして消した。どんなに辛い思い出や、どんなに楽しかった思いでも・・・。
 言葉を覚え、この世の事を知り、退屈な勉強を教えられ、そして初めて人を好きになった事。
 そっと目を瞑り、精神を集中した。まだ心臓はドクドクと早く鼓動を鳴らしているが、心自身は落ち着いた。
 突然今まで吹いていた風が止んだ。――――何かがおかしい――――数メートル先の石段から誰かがスタスタと上ってくる。
 永井依子か!克人はダブルイーグルを石段に構えていた。姿を見せれば即座に撃つ・・・。
 しかし克人の目の前に見える人間は永井依子ではなかった。まさか・・・いや、錯覚ではない・・・現実だ。石段を上がってくる人間の顔が徐々に見えてきた。あの茶色の髪、そして修羅場を潜ってきたような 目付き。中学生が恐れた男が克人の目の前にはいた。
 木山・・・木山誠治(男子六番)。じっとこっちを見つめている。片手には銃が握られている。
 克人と木山は円を描くようにしてお互い睨みながら足を進める。極悪なのは十分わかっていた克人だが、無理は承知で説得を試みた。
 「木山・・・お前、やる気か?」
 木山は黙って克人を見つめていたが、聞こえない声で何かを言った。だが克人には何を言ってるのか分かった。小さく「ああ」と。
 「木山・・・考え直せ。お前みたいな奴がそんなんじゃ、政府の思う通りだぞ!」
 今度は大きな声で言った。しかし木山は何の反応もしない。逆に何かスキを狙ってる猛獣のような目付きだった。
 「おい、木山!聞いてるのか!」
 克人が叫んだ瞬間だった。一瞬にして、木山の握っていたキングコブラ6インチが火を噴いた。まるで早撃ちだった。
 脅しか、本当に外したのか・・・。木山が撃った弾は、克人の顔の数センチ横にある無人のスタンドライトに当たり、パリンという音と共に 電球が割れてその場に落ちた。
 これが合図となって、克人の中の何かが弾けた。
 「いいだろう・・・この際だ・・・決着をつけてやる!」

【あと24人】




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