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BATTLE ROYALE 外伝

第三部
終盤戦



36

 数時間前の銃声は誰だったのだろう。そして一体ゲーム開始から何時間経ってるのだろう。
 さっきまで包んでいた闇はもうない。それとバトンタッチのように赤く輝く太陽が目を覚まそうとしている。もう、6時か・・・。
 一は洞窟から見える太陽を見ていた。眠れない。何故だろう。
 やはりと言うのだろうか、6時の時間を知らせる鶏のように、あの声が聞こえてきた。
 「お〜い・・・元気か〜。残念だな〜、ああ〜残念」
 鬼月の放送はいつものハイテンションとは違って、まるで人が変ったように暗い。何があったのだろう。
 「みんな起きてるか〜。それじゃあ・・・死亡者・・・、女子十一番真行寺文香。男子・・・ 男子五番神山克人。くそっ、死んでしまった〜。神山が死んだ〜。ああ〜金が消えていく〜。せっかく予想してやったのに くそったれが。自殺なんかしやがって。んじゃ、禁止エリアの発表するぞ。え〜、午前8時からC=1、午前10時からD=5、午前12時からG=8だ。 それじゃあ・・・がんばれ」
 元気がなさ過ぎるのは神山克人が死んだからなのだろうか。予想していたのが外れたから元気がないのか。どっちでも いいが、それにしてもあの元気のなさは、まるでお母さんに欲しい物を買ってもらえない子供に良く見る元気のなさだ。 予想していた人間が死んだぐらいであんなに元気がなかったら、政府なんて勤まらないな。
 しかしまた2人も死んでいるのか。この数時間がどういった時間なのか分からなくなっている。あっと言う間に時間が過ぎ、そしてクラスメイトが減っている。 このままじゃ自分の精神状態もまたあぶないな。
 「神山が自殺か・・・」
 後ろで敬二の声がした。振り返ると敬二は一と同じ様に昇る太陽を見ている。そしてそっと一に禁止エリアを書いた紙を見せた。
 「なぁ敬二、なんで自殺なんかしたんだろう」
 そう言うと一は紙を受け取り、自分のデイパックの中に入ってる地図と照らし合わせ、斜め線を書いた。
 「さあ何でだろうな。あの神山が自殺なんてな。精神状態が危なかった・・・。それで自ら命を絶った・・・そんな所だろう」
 「なるほど・・・神山もやっぱりあんな状況じゃ不安なんだ・・・」
 「そう言えば一、お前何時から起きてたんだ?随分と早いな」
 「ああ、何時だったかな。あまり寝れなくて・・・夜景を見てたら朝になってたよ」
 鼻で敬二は笑うと、腰からジグ・ザウエルP2309oを出すと、マガジンを取り出して弾の確認をしていた。
 「敬二・・・」
 「ん?なんだ?」
 「いや、呼んでみただけ」
 「フッ、バカか」
 こんな会話が出来るなんて、まるで普段学校で話すようだ。まだ中学生、いや、もう中学生。そんな子供か大人か分からない 人間がなんでこんな所にいるのだろう。殺し合いをして何を求めるのか?
 「そうだ、河北さんは?」
 「ああ、祥子なら奥でぐっすり眠ってるよ」
 「そうか・・・ごめんな敬二」
 「何がだ?」
 「いや・・・俺が来たから、せっかくの愛の巣を壊してしまって・・・」
 「フッ、なに言ってんだ。友達だろう。それに愛の巣なんか、こんな所にいたんじゃ愛の巣と言うよりも、地獄の巣だよ。 一を見つけて、俺も祥子も心強い味方が増えたと思ってるよ」
 「ありがとう」
 本当になんだか和やかな時間だった。ここが本当に銃声が飛び交う戦場なのかと思うぐらい。
 腰を降ろして座る隣では、ファマス5が何故か寂しく、独りでに外に銃口を向けていた。なんだか銃にも愛情が出てきて、やはり精神状態は危なかった。
 「みんな起きてたの?」
 「おっ、起きたのか?」
 見ると祥子も目を擦りながら敬二の横に立っていた。やはり敬二が目をつけるだけあって、河北祥子は美人だ。もっとも一は椎名瑞希の方が美人だと思っていたが。
 「おはよう河北さん」
 「おはよう本城くん」
 「よし・・・みんな起きた事だし、朝飯にするか。まずい朝飯な・・・」
 敬二は張り切った声で言った。今日はまた新しい一日・・・そんな感じを思わせる。
 「昨日話した通り、一、頼むぞ」
 「ああ」
 昨日話した通りと言うのは、昨日の晩、3人で地下の人工トンネルに缶詰の調達をするのを誰にするか決めていた。それで今日の朝は一に決まった。 祥子はご飯作り担当で、敬二は見張りだ。
 一は相棒のように持っていたファマス5を持つと、洞窟の奥に向かった。
 「ハンカチが置いてあるのとは違う道だぞ」
 後ろから敬二の声がしたが、早く取りに行こうと思い、あまり聞きづらかった。だけどそんな事は分かっている。道ぐらいもう中学生なんだから覚えれる。
 朝の日差しが洞窟の中まで差し込み、昨日よりも数倍明るくて、何がどうなってるのかすべて見える。洞窟なのに、壁にはプレートが植え付けられている。 9=DF?一体なんの事を記しているのだろうか?
 とにかく急いで食料を調達しなければ。一は洞窟の中を淡々と進み、人工トンネルに繋がる地面に設置された赤錆びれたドアを開け、青い階段を下りていった。
 暗い人工トンネルは太陽の光など全く差し込んでなく、一は電球のスイッチを押して電気をつけた。あの部屋までの道程に、壁に血が付いているのが 頭に浮かんだ時だった。
 上のほうで「ドン」と重みのある銃声が聞こえた。次に「パンパンパン」と言う銃声に「ドンドン」と言う違う銃声が聞こえてきた。
 ――――敬二!――――確かな銃声に、自然と足が出入り口の方に走っていた。今まで一度もこのファマス5を撃った事はないが、撃つ準備は出来ている。
 3つの銃声はすぐに止み、敬二の「一!逃げろ!」と言う声が聞こえ、ますます一は足の加速を高めた。
 「ごごごごごご」
 しかし突然地震が起こった。その場で立ち往生するなか、一の耳に岩が崩れ落ちる音が聞こえた。突如にそれが単なる地震ではなく、何かの爆発だと 分かった。
 一体誰が。
 俺がいない数分で、誰かが襲撃してきたのか?
 地震はすぐに止み、一も唖然と立ち尽していた足を無理やり動かした。震えてるのはいつもの通りだ。握るファマス5のグリップに手汗を掻くのはいつもの 通りだ。
 走り、そして上り、洞窟を全速力で走った。
 二手の道で丁度敬二たちがいる道の、ハンカチがない方へ走った。
 だが、走る足はそこで止まった。――――ない――――
 ないのだ・・・。洞窟がない。ない?いや、目の前には洞窟があるはずだ。そして敬二と祥子がいる。土の臭いや岩の質感。それらすべてがなくなっている。
 こんなにも入り口が近いのかと思ったが、なぜ露天しているのか一瞬にして分かった。目の前の人間によってすべて解決した。
 「き、木山!」
 木山を見つけて途端に、持っていたファマス5が火を噴いた。
 「ぱぱぱぱ」
 その音に反応して、木山は持っていたキングコブラを一に向けた。しかし向けるだけで、木山は一が撃つライフルの命中力に驚いて逃げていく。
 逃げる木山を一は追った。追った時に初めて分かった事があった。足を一歩二歩踏んだ時、普通は地面の道が、岩がごろごろ下敷きになっている。
 木山を逃がさない!その一心で一は追った。しかし木山の足は速く、何処に逃げていったのか見失ってしまった。その初めて撃ったファマス5の感触に、 一の体は震えた。異常なぐらい震えた。
 「そうだ!」
 その瞬間汗が全身の毛穴から噴出した。――――敬二!河北さん!――――
 急いで回れ右をして、岩がごろごろ転がる所に駆け寄った。まるで本当に強い地震があった災害の跡みたいだ。幸い家ではなく、岩だったので、ニュースで見たの よりかは被害は少なかった。ただ、二人の生存はその時ないと確信した。
 一が見るからに岩は山盛りに積もっている・・・。
 急いで敬二たちが下敷きになっている岩を探した。結構な重量の岩だが、今はそんな事関係ない。手が汚れていようが、親友とその彼女が生き埋めになってるんだ。
 重たい岩は一の体力を刻々と奪っていく。岩をいくら除けようとも誰の姿も見えない。
 ここで願いが一つだけ叶うなら、敬二と河北さんが、この岩の下にはいませんように。そう願うだろう。
 必死に捜索するが一向に見つからない。しかしそのとき小さな声で、一の背後から聞こえてきた。
 「すまん・・・一・・・。お前と会えて、俺は悔いなく・・・」
 その声は敬二の声だと分かり、急いで声がする岩を探した。その声はもう聞こえず、今となっては勘だけが頼りだった。
 ゴロゴロと転がる小石を除けて、大きな岩を持ち上げた。もう体力も精神も疲れきっていた。
 「ああ・・・ああああああ・・・・」
 岩を除けたそこには、頭から全身血だらけの敬二の死体があった。既に息がなかった敬二に、一は叫ぶしかなかった。
 「け、敬二・・・。おい・・・」
 ぽろぽろと涙が零れ落ちてくる。目の前がまるで夢のように涙でぼやけている。
 ――――さっき・・・さっき敬二喋ったよな?――――
 先ほどの声は一体なんだったのだろうか?最後の敬二の叫びなのだろうか?もしくは心の叫びか・・・。今は動かない敬二の肉の塊があるだけだった。
 ふと敬二の腕に誰かの腕が巻きついている。流れ落ちる涙を拭き取り、一は敬二の横のある岩を持ち上げてみた。
 「あ・・・・」
 そこには祥子の死体があった。しかしただ単にあったわけではなく、敬二と祥子は抱き合って死んでいた。
 それを見て一は跪いた。目から流れ止まない涙は、まるで雨が2人を濡らすようにして敬二と祥子の頬に落ちた。
 「そんな・・・そんな・・・」
 今の一の頭にはすべて敬二と接した記憶が蘇っていた。
 そしてフル回転で敬二と過ごした楽しかった思い出や辛かった思い出の、すべての思い出が走馬灯の様に消去されていく・・・。
 

【残り21人】




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