BATTLE ROYALE 外伝

第三部
終盤戦



38

 「ファイト〜!フレーフレー!みんな元気ですか〜?鬼月先生の放送の時間だ。ただ今の時刻午後12時になりました。お昼ご飯は軽めの方がいいぞ〜。 なぁ〜?お前達腹空いてるだろう?うんうん分かる分かる。俺も毎日缶詰めやレトルト食品ばかりじゃ飽きるもんな〜。食べ物ってのは人間の体内に 入ってどうせはまた排出される無駄な行為だけど、食べないと腹が空く。これは人間の謎だな。もうすぐ2日経つけど早く優勝者決めてくれれば優勝者には 何でも好きなもの食わせてやるぞ〜。いいか〜今動いてない奴は動いて敵を見つけて戦え!いいな。よし!」
 雑貨屋の入り口付近で兼光を待っていた樹は、鬼月の放送を聞いてすぐに腕時計を見た。もう12時か。時間が経つのは早い。今まで自分が敵(殺る気の人間)と 会わなかっただけでも幸せだ。
 がらがらと雑貨屋のドアを開けて出てきたのは天美だった。手には鉄製のコップを2つ持っている。中身はさっき作ったコーヒーだ。 樹は昼の食事として浅いものを考えていた。雑貨屋にはこれといって主食のようなものはなくせいぜいスナック菓子やクッキーなどである。菓子パンも あることはあるのだが、どれも賞味期限が切れているものばかりだ。
 デイパックの パンは半分しかなく、天美、兼光のデイパックにはパンがまだ一つ残っている。ここ(雑貨屋)を見つけていなかったら今ごろ飢え死にする所だったかもしれない。
 樹は昼の食事として適当にコーヒーとスナック菓子を摂ると天美に言った。コーヒーも普通のではなく砂糖、粉ミルクを多めにいれたものだ。 コーヒーのカフェインでまずは眠気を少しでも取り払い、砂糖の糖分で頭の回転をよくする。あとの粉ミルクは栄養を補う為だ。
 「樹、出来たよ」
 「ああ、ありがとう」
 樹は天美からコーヒーが入ったコップを受け取ると、一口啜って鬼月のまだ終わっていない放送を耳を澄まして聴いた。禁止エリアのことが気になるが、 それよりも兼光が農協から帰ってくる途中に、誰かと交戦して死んでいないか心配だった。
 「それじゃあ死んだ奴発表するぞ〜。まずは女子七番河北祥子、女子は以上、次は男子、十四番野ノ久敬二 だ。死んだ奴は以上。少ないぞ〜、もっと探索して敵を見つけろ!ほい、次禁止エリアの発表です。午後2時からB=4、午後4時からA=5、午後 6時にG=2だ。いいな。メモれ。それじゃあ今から必死で動いて敵を見てつけてくれ!」
 樹は頭の中に記憶してあった地図に、禁止エリアになった所を斜め線でチェックした。見た感じ脱出方法を妨害するような被害はない。確実にあの場所を 禁止エリアにしなければ大丈夫だ・・・。
 「なにか鬼月の様子が変だ。前の神山が死んだ事で落ち込んでいたが今は普通にハイテンションだ。だがおかしい。なにか・・・」
 一口甘いコーヒーを飲んだ天美だが、見た感じよりも味はカフェオレに近い感じがする。同じ様に一口飲んで独り言を言う樹に不思議そうに尋ねた。
 「鬼月がどうしたの?」
 「ん?天美は気づかないか?鬼月の異変に・・・」
 「異変?ううん、別に」
 「そうか・・・」
 「どうしたの?」
 「いや勘違いかもしれないが、鬼月の放送で思ったんだ。あいつ最初はゲームを楽しんでいた人間のような声をしてたけど、神山が死んでからでは何か こう・・・、早くこのゲームを終了させたい、って感じに今の放送が聞こえたんだよ」
 「うん・・・そう言えばそんな感じもするわ」
 とにかく今は鬼月どころではなかった。死亡者の発表で兼光の名前が発表されてなかっただけでも少しは安心したが、まだ気は抜けない。
 「いや気にしなくていいよ。どっちにしても鬼月は自分勝手だって言いたかっただけだから・・・」
 「・・・そう」
 うんうんと頷きながら天美は、雑貨屋にあったチョコレートをコーティングしたスナック菓子を袋から一つ取り出して食べた。甘くて美味しかったので 樹に勧めたが、やはり樹はあまりそう言うお菓子を好まないらしい。本当は菓子パンの賞味期限が切れていなかったら良かったのにとその時思った。
 妙に天気が良くて、このままじゃ日射病よりもまず頭が狂いそうだ。外見落ち着いていたが、心の中では樹は焦っていた。花火の準備も万全だが、 肝心の兼光がいないと始まらない。
 樹の考える脱出方法は廃校爆発から始まる。
 まず花火を打ち上げて、山岳地帯から兼光のスナイパーライフルG3で、廃校の前に止まってるヘリのガソリン部を狙って爆発させる。それで政府は驚いて 慌てる。一方真司のほうでクラックのウイルスが政府のメインサーバーに入り、情報はともかくすべてを破壊する。 あとは自分がスタート時から必死の思いで見つけた軽トラを、爆弾車に 改造した爆弾軽トラックをF=5の山岳地帯とは異なった、E=6の木々が最大に少ない場所から走らせるというものだった。
 実際樹の頭の中には天才とも言える記憶力を持っていて、見るもの聞くものすべて頭にインプットできるコンピューターのような頭だった。しかしこれには少し 深い訳があった。
 樹も小学4年生まではごく普通の少年だった。しかしある時に交通事故に遭い、大脳に傷がついてしまって一時期植物状態になった。その一年後に 樹は回復したのだが、そのときに医者から原因不明の病気を持って生活しなくてはならないと宣告された。
 外見からは全く分からないが、樹には交通事故に遭う以前の記憶が全く無い。家族の関係など、最小限大事な人は分かるが、それまでの思い出や学校の 友達など全く覚えてなかった。
 それから一生治らない障害として、見るもの聞くものすべてを頭に入れて、そのいらない情報は削除するような頭脳になってしまった。すべての思い出を 消す代わりに大きなものを手に入れた樹だったが、決して納得はしなかった。いらない情報など拒否しても必ず頭の中に残り、いちいち消去しなければ その情報はいくら忘れようとしても無理だった。
 自分の障害のことは家族以外誰にも話してない。勿論それ以前の交通事故の事もだ。親友の一でさえ教えていなかった。そのことを言うには樹の中にいる 大きなプライドが許さなかった。これも消去したかったが性格だけは変えれない・・・。
 喉に通る甘いコーヒーは体を温めて美味しかった。と、木々の方から誰かがやってくる。同時に警戒心が強く生まれた。
 木々抜けて必死で走って来る人間はすぐに誰だか分かった。――――武藤!――――
 はぁはぁと辛い顔をして走ってくる。いくらサッカー部で走りなれているとは言え、約2キロの道程を全速力で走ったのだからどんなに凄いスポーツ選手でも 息切れして体力を消耗するだろう。それに兼光には誰かに狙われないかという危機感がいつも張り付いている。さすがに凄いと樹は兼光を感心した。
 「ありがとう武藤、大丈夫だったか?」
 「はぁはぁ・・・。え?ああ・・・それより水をくれ・・・」
 樹は天美にあらかじめ沸かして作っておいた水をコップに入れて差し出した。この水は雑貨屋の置くには小さなキッチンがあり、プロパンガスのおかげで 裏の井戸から取った水で、それをこして沸かした水を使っている。
 兼光はその水が入ったコップを取るとすぐに一気に飲みほした。よほど喉が渇いていたのだろう。だがそこは部活で鍛えた体。おかわりとは言わなかった。
 「ちゃんと渡してきたぜ・・・トランシーバー・・・」
 「ああ、ありがとう。ちゃんと交信できたよ。武藤のおかげだ」
 「お帰り武藤君」
 天美が兼光の分も作っておいたコーヒーを差し出した。はじめは拒んでいた兼光も天美の甘い誘惑に押されるごとくコーヒーを飲んだ。
 「で、影野・・・。ちゃんと伊藤達には花火の事は言ったのか?」
 「ああ、数時間後と言ってある」
 「それで実際の所何時に花火を打ち上げるんだ?」
 兼光は樹から借りていたオートマグUを樹に返すと、樹も雑貨屋の中から兼光のスナイパーライフルG3を出して渡した。正直言って兼光はこのスナイパーライフル がどのぐらい威力があるのか分からない事もあって、天美の支給武器であるデザートイーグル9oに興味を抱いていた。
 盗聴されているということもあって、樹は胸ポケットから話をするために書く紙を取り出した。兼光にもマジックを手渡し、樹は淡々と紙に書き始めた。
 『準備は出来ている。あとは武藤が地図で言うF=5の山岳地帯にそのスナイパーライフルを持って、廃校にあるヘリやジープのガソリンタンクに弾を 浴びせて爆発してくれ。その間天美が花火を打ち上げる。それで俺がそこに止めてある軽トラでE=6まで行ってて、花火を見たのと同時で 俺が軽トラを廃校に突っ込ませる。それで伊藤のクラックが成功すればあの廃校の防衛兵士どもがこの場所を察知してくる。あとは事の次第だ・・・』
 脱出方法はそれだけか?いや待てよ・・・。廃校や鬼月には痛い目にあわせれるが肝心の脱出はどうなるんだ?この首輪がついている限りたとえ サーバー事態壊れて首輪に指示が送れなくても、海に逃げてどこかの町に逃げた時には既に修復されている。もしくはまた別に政府派遣グループが 来て新たなサーバーが登場・・・。しまった。肝心の自分達の脱出を考えていなかった・・・。
 兼光が紙に書く前に、樹は兼光の手を止めてそのことを書いた。肝心の脱出が出来ないのを兼光はそうかという表情で答えた。その脇から天美も紙に書かれてある 文を見て驚いていた。さすがにここまで手の込んだ事を考えていたんだ、みんな肝心の事を忘れていたのも無理はないだろう。
 今からじゃチャンスが無い。いやあったとしても時間がかかる。そこで樹はひらめいた。 伊藤・・・。伊藤に改めてクラックとハッキングをするように言わなければならない。 時間がかかるかもしれないが真司ならできると考えた。
 しかし肝心の通信手段はトランシーバーのみ。それにまた兼光を行かせる訳にもいかない。向こうの電源が切れているんじゃトランシーバーも使い物にならない。
 「ピーーー」
 どうしようか3人とも頭を抱えていた時に、幸運にもトランシーバーから相手が電源を入れた事を知らす警告音が雑貨屋の中でした。 助かった。その言葉と同時に樹はトランシーバーを置いてある雑貨屋の中に入った。
 「・・・い・・・おーい・・・聞こえるか?俺だ、伊藤だー・・・どうぞ・・・ガチャ」
 「助かった!伊藤!肝心な事を言うのを忘れていた・・・どうぞ・・・ガチャ」
 すべての話し声は廃校にあるコンピューターに聞かれているが、今は言うしか手段はなかった。
 「・・・影野か?俺も肝心な事を忘れていたんだ・・・どうぞ・・・ガチャ」
 「まさか・・・考えている事は同じか?・・・どうぞ・・・ガチャ」
 「そうかも知れない。俺のやること、お前のやることはまさか単なるあがきじゃないか?・・・どうぞ・・・ガチャ」
 「やっぱり伊藤も気がついたか!俺も今気がついたんだ!何とかしてクラックの前にハッキング出来ないか?・・・どうぞ・・・ガチャ」
 真司とは気が合いそうだと樹は焦る声を出しながら思った。
 「確かにこの銀(暗号として銀=首輪の事)の事だろ?俺でも情報を盗むのは難しいが、今のウイルスを改造してやってみるよ・・・。その代わり 時間を要するぞ。必死でやっても今日中には終わりそうにない・・・明日の朝方になると思うが・・・・・・どうぞ・・・ガチャ」
 「分かった、頼んだぞ。その間俺も何かいい方法を考えておくようにする・・・どうぞ・・・ガチャ」
 「おう、それじゃあな。電源は付けておいてくれよ・・・どうぞ・・・ガチャ」
 そう言うと真司はトランシーバーの電源を切った。とにかく良かった。このままじゃ肝心の脱出が出来ない。真司のハッキングでメインサーバーから 情報を盗んで、何とかして首輪の取り外し方を知らなければ事が始まらない。首輪の構造なら樹は自信があった。特殊な機能の組み込まれた 機械は得意中の得意だ(コンピューターを除いては)。まさに今の真司と樹は最強とも言えた。
 横でそれを聞いていた兼光も天美もほっと一安心した。安心すればおなかが空くが今はそんなに空いてなかったし、コーヒーのおかげで満足度はあり、 頭の回転も速い。
 「しかし伊藤が一人で頑張ってるんだ・・・。兎にも角にも俺達で考えられる事はないか?」
 「今の俺には全く思い浮かばないな・・・。お前の考えが羨ましいぐらいだ・・・」
 兼光が愚痴っぽいことを言った時だった。天美が何かトランシーバーに耳を傾けている、なにをしているのかと思った不意に、「音が聞こえるわ・・・。 確かに人の声よ」と樹に叫んだ。樹と兼光が慌てて近寄ると、トランシーバーから聞こえてくる音が更に小さくなった。
 何かに気がついた樹は天美からトランシーバーを取ると、雑貨屋の中から外に出て、空に向かってトランシーバーを動かした。
 トランシーバーをふと東側に向けた時、トランシーバーから普通に通信するような音量で誰かの声が聞こえてきた。真司ではないらしい。 兼光や天美もそっと耳を傾けて聞いた。
 「ジジ・・・・か?・・・・応答願う・・・誰かいないか・・・・ジジ」
 無線だ・・・。はっと樹は気づいた。何処からか無線で、誰かがこちらの電波と波長を合わせたのだ。いや、あったと言う方が正しい。とにかく助けを求めれば助かる・・・。そう思ったが 何か変だった。
 「はい。聞こえています、応答願う・・・どうぞ・・・ガチャ」
 樹は応答に答えたが、無線の誰かは、妙におかしかった。
 「・・・おお!こちら大阪府岸和田桜町立桜中学三年A組六田信也、それに・・・」
 一人ではないようだ、2人ほど自己紹介が聞こえた。
 「同じく俺は三年A組戸野晃一・・・」
 2人だけなのだろうか、樹が話そうとするとまた誰かの声が聞こえてきた。今度は女性の声だ。
 「私の名前は日比野怜・・・ほら葵、あんたも言いなさいよ・・・」
 するともう一人女性の声がした。
 「わ、私は相原葵です。よろしく」
 一体何人いるのだろうか?トランシーバーからはごちゃごちゃと焦ってる声が聞こえる。
 「・・・こちらは4人。そちらの事を教えてもらいたい」
 最初の六田信也という人物の声がした。まさかとは思うが、なぜ3年A組というのか?樹の予想があってれば今交信している相手は・・・!
 「ああ、俺は香川県善通寺第四中学三年E組影野樹・・・」
 樹は横にいた兼光にトランシーバーを渡した。少し焦っている兼光は何とか自己紹介をした。
 「えっと同じく俺は武藤兼光、それに」
 次は天美の番だが天美は何の焦りもなく、落ち着いた様子で自己紹介を始めた。
 「私は神楽天美。こちらは以上よ・・・ガチャ」
 天美が手渡したトランシーバーを3人は耳を澄まして訊いた。トランシーバーからだと電波の受信が悪く、いくら一番電波が届くところでも テレビの砂嵐のような音は必ず聴こえている。
 「ジジ・・・まさか君・・・いや影野君だっけ?今プログラムの途中か?」
 「まさか六田君も?・・・ガチャ」
 「ジジ・・・何てこったどういう偶然だろう・・・。俺も影野君もプログラムの途中だなんて・・・」
 やはりそうか・・・。こうやって同じ境遇の人間と話すのは何故だか不思議だ。
 「俺の事は樹でいいですよ・・・ガチャ」
 「ジジ・・・だったら俺も信也って呼んでくれよ樹!」
 確かに大阪の人間は気さくな人が多いと聞いたことがあるが、話声を聴いているとそんな感じが伝わってくる。
 「ジジ・・・そうだ樹、今なにやってんだ?俺の方は4人生き残って楽しくやってるよハハッ」
 何を言ってるのだろうこの信也という人は・・・。
 「え?俺の方は今脱出方法を考えている所だけど・・・信也の 言っている事はおかしくないか?・・・ガチャ」
 「ジジ・・・脱出?アハハッ面白れー事言うな。おい聞いたか?脱出だってよ?」
 信也の後ろでは戸野晃一という明るい男子や日比野怜、相原葵とか言う女子が大いに笑っている。なぜにそんなに笑うのか分からなかったが、 ただ腹が立った。
 「なにがおかしい?お前もプログラムから脱出したいだろ?友達を殺したくないだろ?・・・ガチャ」
 「ジジ・・・まあ友達と殺し合いなんてしたくはないよ。けれど俺達4人は既に友達殺して、それであと生存してるのが俺達だけなんだよ、なあ日比野?・・・」
 音声には何か足音が聞こえてくる。じゃりじゃりと地面を歩く音だが、予想ではビルの中・・・いやそれともなにかの建物・・・。 考えはすぐに日比野怜という女子の声に掻き消され、日比野怜は淡々と喋っていく。それに口調が男っぽい。
 「ジジ・・・影野君?私は日比野怜よ。怜って呼んでね。さっきの話だけど、あんたの考えちゃんちゃら可笑しいよ。そりゃ私も友達と殺し合いなんて したくないわよ。けど仕方なかったのよ。今いる4人は全員友達を殺しているのよ」
 「可笑しいのはあんただよ怜さん。友達を殺しているだって?それじゃあ何で4人とも戦わないんだ!・・・ガチャ」
 自分とした事が何故こんなに激情しているのだろうか・・・。理に沿わない事が自分に腹を立ててしまったが、こんなに怒る事は当然だろう。しかしこのままじゃ 話にならないだろう、それを見て天美が横から貸してと言ってきた。やはり女は女同士話した方が良さそうだ・・・。
 「日比野さん?私は神楽天美です。さっきの話の理由を聞かせてくれない?・・・ガチャ」
 「ジジ・・・理由?フフ、そうね聞かせてあげるわ。今の状況、生存者はここにいる私達だけよ。電力会社の予備電力でそこら辺にあった無線機で通信 しているの。私達は偶然ばったり電力会社で出会ったわ。皆友達を殺していたけど、そのときは何故か殺す気がなかったらしいのよ。 私もそうよ。こんなに友達が殺されていて、なんで自分だけ助かろうと思ってんだろうとバカになっちゃって。それで今4人で人生最後の パーティーをしているわ・・・」
 後ろから戸野晃一と言う人物がクラッカーを鳴らして叫んでいる。なんて事に大阪のプログラムはなってるのだろう・・・。
 「日比野さん・・・あなたの言う事が少し分からないわ・・・ガチャ」
 「ジジ・・・もうすぐここも禁止エリアになるわ。そうね、最後だから簡単に言うわ・・・。私達4人は首輪が爆発するまで楽しくパーティーをしている の。よく考えれば このゲームに参加した時から私達は死んだ方が幸せなのよ。一人生き残って罪悪感が残ったまま家に帰るよりも、みんなが死んでいるこの島で死んだ方が 一番幸せなのよ・・・」
 「な、なんて事言ってるの!?日比野さん落ち着いて!あなた生きるのよ!なんとかして脱出方法を考えるのよ!・・・ガチャ」
 ふと樹が天美の顔を見ると、目には涙が溢れていた。
 「・・・ジジ・・・そんなの自分の勝手よ。私達が選んだ道なの。今が一番楽しいわ。美味しいお菓子に美味しいジュース、もう4人しかいないこの島では 何をやってもいいのよ。だから楽しく死ぬの」
 トランシーバーから聴こえる声は既に日比野怜の声ではなくて、もう一人の女子、相原葵という人物の声だった。またもその後ろからは戸野晃一という 男がイエーイと叫んでいる。
 「そんな・・・」
 天美は意外な答えにその場に膝をついて倒れた。咄嗟に兼光が天美の体を支え、落ち着きを取り戻した樹がトランシーバーに答えると、 相原葵は信也に代わっていた。
 「ジジ・・・樹か?どうだ?納得したか?お前らはお前ら、俺達は俺達だ。人間には決意がある。それは時としてどんなにいいように言っても 気持ちは変わらないぜ」
 「ああ分かったよ信也。お前の言う事は分かった・・・で、いつまでそうしている気だ?」
 「ジジ・・・まああと2時間ちょっとだな。2時間後にはここ(電力会社の一室)が禁止エリアになる。死んだら俺の声も俺のかっこいい顔も なくなる・・・いや存在自体なくなるが、楽しく死んで、あの世で死んだクラスメイトに会う予定だ・・・」
 「そうか・・・。信也、楽しいか?」
 「ジジ・・・ああ勿論!初めて銃を撃ったし初めて自動販売機を壊した。それに今から最後の楽しみとして死ぬ前に一発大きな事をやるつもりだ。ヘヘッ、 いいだろう」
 もう笑うしかなかった。信也も死ぬのが怖くないように本当に楽しんでいる。
 しかし次の瞬間、驚愕することがトランシーバーの向こうでは起こった。
 「ジジ・・・ババババババババ」
 銃声だ!どういう事だろう。マシンガンのような連発した銃声がトランシーバーを通じて聴こえる。きゃあと叫んだり、うげっと喚く声がした。
 断末魔が樹や天美、兼光の耳に聞こえた。
 すぐにトランシーバーからは銃声がなくなったり、カチカチと弾を切らした音がした。
 「おい!どうなったんだ?おい!信也!おい!」
 何ども叫んだあと、トランシーバーから男子の声が聴こえた。――――・・・・信也!――――
 「ジジ・・・ヘヘッ、聴こえたか?俺の支給武器のウージーちゃんの声・・・ヘヘッ」
 「おい信也・・・どういう事だ?お前まさか・・・」
 「ジジ・・・思っている通りだよ。今俺の目の前には3体の死体が転がっているよ。みんな蜂の巣状態で死んでるよ。ヘヘッ、 俺言っただろ?一発大きな事をやるってね・・・」
 「信也!お前友達を裏切ったのかー!!てめえおい!」
 「ジジ・・・うるせぇぞてめえ!これがゲームのルールだ。けっ、なんで俺が4人で心中しなきゃならないんだ。俺だけじゃねえよ、きっと 他の奴も裏切る事を考えていたんだよ。要は利用する事だ」
 「・・・・なぜだ・・・」
 樹は唖然としていた。裏切りの瞬間をトランシーバーを通して生で聴いてしまった。しかしすぐに違う音がトランシーバーから聴こえてきた。
 「ジジ・・・優勝おめでとうー六田ちゃん!よくやったわ。あなたはいい子よ。さあ早く分校に来なさい。やりたい事があれば少し待つけど・・・」 「ああ、少し待ってくれ、すぐ行くから・・・」
 信也はプログラム教官の放送を聞いていて妙に落ち着いている。そしてトランシーバーからは最後の一言が聞こえてきた。
 「ジジ・・・樹、まあせいぜい頑張って脱出しろよ。俺は家に帰ってクラスメイトの親から恨まれるだろうけど、仕方がないぜ、これが人間の本性なんだから。 ま、とりあえず生き残りたきゃ人を信じない事だな」
 そのことを言うと信也の声と共にジジと言うノイズ音も消えた。どうやら無線の電源を切ったらしい。
 もう怒る気力も失せた樹はトランシーバーを静かに投げつけようとしたが、その直前に兼光が樹の手を止めた。たとえ腹が立っても 肝心のトランシーバーを壊せばいままでの事がすべて終わりになる。不意に見せる兼光のやさしさに、樹はまた意外な所を発見した。
 何かすべてのやる気がなくなった3人はその場にじっと佇んだ。

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