BATTLE ROYALE 外伝

第三部
終盤戦



47

 もう怖いものなんてない。だって俺は2人も殺してるんだ。怖がる事なんかない。最強の体と武器があるし、優勝は間違いないはずだ。
 前沢忠文は再び小松亜紀、田中潤平を殺害したこのグラウンドにやってきた。
 手にはショットガンにポケットの中にはワルサーP99が入っている。なぜここにやってきたのかは忠文自身分からない。
 光がほしい・・・。少しだけ夜を恐れた時があった。引き寄せられるように光がある場所、つまりグラウンドへ足を運んだのだろう。
 暗闇が怖いわけじゃない。獲物が見えにくいのが嫌で仕方なかった。もっとはっきりした標的を狩りたい。その一心で忠文はグラウンドへ来た。
 「ん?何だ?」
 遠くで何かが動いてる。案の定グラウンド内のライトのおかげではっきりと見える。こちらからは背を向けていて誰がいるのか はっきり分からないが、セーラー服ではない事から男子だと確信した。では一体男子の誰か。いや、そんな推理をしている暇はない。 俺にはこのゲームに優勝して、父の後を継がなければならない。そのためには生きてるもの、この島での生存者はすべて排除する。
 片手で持っていたショットガンを両手に持ち替えた。薄気味悪い空気が流れる中、忠文はそっと忍び足でなにやら必死で手を動かしてる 男の所へ近づく。既にきっちり決めていた自己流オールバックが乱れていた。
 「・・・!」
 近づくたびに確信するものがあった。男の近くにある死体、それは正しく自分の友人であり、殺害した田中潤平の死体だった。見るも無残に 変色していた。ずっと見てると、今にも起き上がって襲ってきそうな程不気味な顔だ。
 忠文が1歩足を伸ばした瞬間、前方の男の手の動きがぴたりと止まった。途端に心臓が高鳴る。――――やばい、やばい――――
 ゆっくりと前方の男は振り返る。
 「!」
 そこにあった顔は口の周りが血だらけの玄岩亮介だった。見ると手には手?いや、肉か?目を疑ったがそれはどう見ても人間の手だった。
 「お前、玄岩だろ?その手・・・。まさか、人を、食ったのか?」
 忠文の体に流れていた血が一気に止まった。まさか。そんな。馬鹿な。人肉を食っているだと?おかしい。おかしすぎる。おい、冗談やめろよ、怖えっ。
 素早く思考回路をぐるぐるかき回す。あの時、この場所。潤平の体は食われてない。とすると小松・・・。食ったのは 小松亜紀の肉か!
 その答えを出した瞬間、頭の中が音を出して混乱し始めた。喰う。何喰う?肉。人肉。小松、亜紀。血。クラスメイト。
 しかし、忠文は我に返り、両手で構えていたショットガンを亮介に構えた。
 忠文の目に映った亮介は、既に化け物と化して見えた。怖い。こんな奴武道なんか通用しない。映画でしか見たことのない、化け物。こんな奴、クラスでいたのかよ。
 「ぐわあああああああ」
 それを見た亮介はまるで狼の様に吠えた。口の中に詰め込んでいた人肉がぽろぽろと涎混じりで地面に落ちた。
 「ぼと」っと言う妙に気持ち悪い音がした。
 「があああああ」
 すると亮介は一気に忠文との距離を詰めた。いや、正確に言えば忠文の近くにある何かを拾ったのだ。驚きのあまり、ショットガンの引き金に力が入った。
 「ドンッ」と、両手に物凄い重低音が圧し掛かり、物凄い大きな銃声が耳を劈いた。
 一瞬転びそうになった忠文は、素早く足を内股にして支える。ショットガンの筒からは白い煙が出ている。初めて撃ったショットガンに、物凄い恐怖と期待を感じた。それに、少しの罪悪感もあった。
 「ぎゃああああ」
 その煙の先で吠えているのは、シュタリアーAUGを拾って構えようとしていた亮介だ。肩を押さえてその場に倒れている。右肩の一部がショットガンによって吹き飛んでいて、スコップで抉ったように肩の肉がなく、そこから白い骨が見える。
 「・・・・痛いか?」
 「ああああああああ」
 まだ吠える亮介は地面でのた打ち回る。ばたばたと足をばたつかせ、肩を押さえていた手は血まみれだ。もう片方の手は地面の土を爪を 立てて強く掴んでいる。
 迷うことなく忠文は、ショットガンを地面でのた打ち回る亮介に向けた。その瞬間、又も亮介の顔つきが変り、今度は殺意を持った鬼のような 顔をして、ひょんとその場で立ち上がった。そして片手に持ったシュタリアーAUGを忠文に向けた。が、しかし、忠文は既に引き金を引いていた。
 「ドンッ」
 又も強い振動が忠文の体を揺さぶり、ショットガンの先が頭上に上がった。
 「ぎゃあああああああ」と、またも亮介はショットガンの弾を体に喰らった。
 だが、次に忠文が亮介を見たとき、信じれない体になっていた。
 ショットガンによって亮介の体は後方へ6歩程下がった所に飛んだ。そのショットガンから発射された鉛は、今度は亮介の腹に命中した。 腹の中心部が抉れていたのは言うまでもない。
 奇妙にもポックリと亮介の腹には直径15センチ程度の大きな空洞ができている。中から血が溢れてきていた。
 「ぐぎぃぎぃぎぎぎぎぎぎ」
 声は震えているが、空洞の腹を押さえながら亮介は立ち上がってきた。忠文は驚きを超えたものを感じ、一歩二歩と後ずさりしながら 弾をポケットから出して詰めた。まさか 立つとは。馬鹿な。馬鹿なっ!こんな事ってありえるのかよ・・・。
 「ぎぎぎぎぎぎぎ」
 既に声になっていない叫びで亮介は更に牙を向け、忠文に向かって突進してきた。
 化け物。
 後ずさりしていた忠文が、突進してくる亮介に向かって一歩近づいた。更にうまくショットガンのグリップ部分を中心に 肩と顎で押さえながら構えた。
 来るな。
 「ドンッ、カチャ、ドンッ、カチャ」
 一心不乱に引き金にあった指が同じ動きを繰り返した。
 大きな銃声は、亮介の体と共に止んだ。亮介の体は走ってくるスピードに乗って大きく円を描きながら空に舞った。胸、太腿、腹。 もはや空洞だらけの亮介の体はドスンと音をたてながら地面に着地した。
 「はぁはぁはぁ」
 覚めやらぬ興奮状態の中、忠文はそっと地面に降り立った亮介を見つめた。
 『死んだか。死んでないか。また起き上がってくるかもしれない』
 その言葉が何度も脳の中で回転した。ぐるぐると回り続け、挙げ句の果てにある決断が浮かんだ。このままじゃおかしくなりそうだ。 早く終わらせる方法。
 忠文は地面で倒れているスカスカ体の亮介に駆け寄った。勿論死んでいる。そう、死んでいる様に見えるだけなのかもしれない。油断はできない。 「カチャ」
 ポケットからショットガンの弾を取り出して詰めたあと、忠文は今にも起き上がってきそうな亮介の死体を見下ろした。もはや地面にはぴちゃぴちゃと 音が聞こえるぐらいの血が溜まり、血溜りになっている。
 ゆっくりとショットガンの口径を亮介の頭にポイントする。肩と顎で振動を押さえ、ゆっくりと引き金を引く。
 「ドンッ」
 完全に終わらせる方法。
 「バシュッ」
 見事に亮介の頭は、ショットガンによって吹き飛んだ。一気に脳みそと血が飛び出し、忠文の顔にかかった。更に亮介の頭があった 地面は、まるで隕石が落ちたように陥没してぐちゃぐちゃになっていた。
 ぶしゅうううと音を立てて吹っ飛んだ頭は飛び散り、大量の血が一部に溜まっている。
 もはや生き返ることもない。生き返っても何もできないだろう。忠文は唾をその場に吐き捨てた。その瞬間、北の空に大きな音が響き渡った。
 「パパパァァァァァン」
 それはどう見ても深夜に浮かぶ虹色の花火だった。小さいが忠文は見惚れ、期待に駆り立てられた。
 「あそこにいるんだな」
   

【残り16人】





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