BATTLE ROYALE 外伝

第四部
フィニッシュ



56

 午前4時50分。空は何事もないように色を変えていく。一体神様はいるのだろうか?それとも神は本当は悪魔なのではないか?
 闇と言える森林の中を走る一人の少女がいた。体内からは醜いほどのドス黒い血が噴出していた。
 「はぁはぁ・・・」
 銀の首輪は生存の証。いつ死ぬのかと喪服姿の人達がいやらしいほどの顔をしてこっちを見ていた。これは幻覚か?それとも死後の世界を 自分は彷徨っているのだろうか。
 ご愁傷様ですと、親戚や知人が母に挨拶する。家には自分の写真と父の写真が隣合わせで並んでいる。
   「・・・はぁ・・・はぁ・・・。ほ、堀川さ、ん・・・」
 まだ死なない。まだ死ねない。椎名瑞希は思った。なぜフラッシュバックのように思い出が次から次へと見えるのだろうか。
 もう少し。瑞希は目の前に見える薄い灯を見つめながら走った。このゲームの始まりの場面。
 「そうよ、絶対そうよ・・・。私達・・・・選ばれたのよ・・・」
 その誰かの声で瑞希は目を覚ました。随分とバスに揺られていたと思ったら、こっくりこっくりと寝ていた。
 バスでの隣の席は小見有紀。だが今は殺風景な見る限りの教室で、右隣は小松亜紀。左にはまだスヤスヤと寝ている佐藤匠の姿があった。
 目を覚まして気がついたことがあった。それは首に巻いてある物。バスの中ではみんなが首輪なんてしてなかったはずだが、今の教室ではみんなが 犬のように銀色の首輪を巻いている。
 それからは事の次第。BR法の噂は本当だとここで確信し、そしてここで後悔した。
 「首輪巻かれるって本当〜っ?」
 「うそっ!拉致されるの?」
 何処から流れてきたのか。それと誰が流した噂か。つくづく噂というものは怖いものだと瑞希は実感した。
 「え〜、俺の名前は・・・」
 薄暗い廊下からスパイクのようなスニーカーを履いてきた鬼月がそこにはいた。
 恐怖のどん底に落とされたのはこの男がきっかけだ。血みどろ臭い所に39人は落とされ、そこで武器を支給されて、戦わされる。
 「はぁはぁ・・・」
 頭に映る思い出の映像とは違い、瑞希は花火があがった雑貨屋に辿り着いた。暗い森林よりも明るく、そして温かい。そう、血の温かさ・・・!
 「・・・・え?」
 思わず声を出した瑞希の視界には地獄が映っていた。
 なぜか近くでは焦げ臭いにおいと、空には何か不気味な物体がちらちらと見え、その下には中華なべで炒め物をするときのように、ゴォゴォと真っ赤で 黒い、そして蒼い炎が舞い上がっていた。
 「ちくしょう!このやろう!」
 突然横から声が聞こえてきた。その声は怒りがこもっており、聞く人によってはキチガイのような叫び。獰猛というのだろうか、今にも襲いかかって来そうな 感じがする。
 瑞希が左を振り返ると、そこには小さな雑貨屋の隅に隠れながら銃を構えては撃っている本城一の姿があった。瑞希にはその一の姿が恐ろしく見えた。
 一方一が銃を構えて撃つ先には、一人のチャラチャラした人間が同じく銃を片手に構えていた。その人間は細い髪、それに学校内で知らない人間は いないといわれている生徒、木山誠治だった。
 木山は大きな岩の後ろに隠れながら一を狙っては撃っていた。その光景は、よく見るヤクザ映画の戦闘シーンに良く似ている。
 「・・・っ」
 体に埋まった銃弾が暴れ出した。そのまま瑞希は片手に握るブローニングハイパワー9oに動揺をぶつけた。
 ――――どうしようか。もう薬の効果が切れ始めている。このままだと痛みに耐えられなくて死んでしまいそう。どうしよう。どうしよう。この 銃でどちらかを撃つ。それとも二人とも狙う?もう生き残ってる人は少ないはず。そう、きっとそうよ。さあ、どっち。私はどちらを殺せばいいの? 見た限りどっちも悪いように見えるけど・・・。
 ――――本城君はやさしくて頼りがいのある人。そして私にとって特別な人。けど、こんな狂ったゲームではどうなってるのかわからない。
 ――――木山君はクールで喧嘩が強い。けど、弱い人間には手を出さない人間。口数が少なくて、何を考えているのかも分からない。
 早くしろと言わんばかりにブローニングハイパワー9oが揺れた。そんな風に見えた。もう言葉にできないくらい痛い。体の節々が痛む。確かに 体の中に重い鉛があるのがなんとなくわかる。
 瑞希には憧れがあった。そのときにそれは突然やってきた。普通の女の子。普通のことをして普通の恋をする・・・。答えなんて既に出てたんだ。
 「ちくしょうーーーーー!」
 精一杯の声で瑞希は叫んだ。そして銃を構えながら走った。木山の所へ。
 「バキュン!バキュン!」
 木山は突然の襲撃に驚いたままで、瑞希が撃った銃弾2発は見事に木山の腹部を捕らえた。その時の木山はいつもの様に制服のボタンを全開にしており、 中から見える黒い服がかっこよく見えた。
 「し、椎名さん!」
 ぐるっと回転しながら地面にスッテン転んだ木山を他所に、一が瑞希に声をかけて来た。こちらも突然の出現で驚いている。
 もう一発、倒れた木山に銃弾をぶち込んでやろうか考えていたが、見る限り木山は動かない。それに一に呼ばれた今の瑞希は、伝えなければならない事があった。
 「本城君!」
 距離にして5メートルくらいだろうか。隠れていた一は今にも走ってきそうな勢いで、体を出していた。なにか伝えたいことがあるのだろうか、瑞希には そんな一に見えた。
 だが、今は言わせない。まずは自分から先に言いたかったのだ。どうしても。ぜったいに・・・。
 「そのままでいいから聞いてーーーー!本城君ーーーー!私ねーーーーー!本当はねーーーーー」
 大声で。すべての気持ち。伝えたい。
 「戦いの邪魔をするな・・・」
 悪魔の声とはこんな声なのだろう。左の耳元で静かに、そしてかすかに聞こえた。
 「ドンッ!ドンッ!」
 「がっ!」
 すべて言えると思ったのに・・・。瑞希は体を一の方に向けたまま横に吹っ飛んだ。重い何かに突進され、 トランポリンに乗ったような感じで、フワッと浮き、そしてすぐに地面に着地した。
 ああ、死んだのか。もう死んだのか。いや、もう 死んでいるのか。瑞希はそのような事を考えた。
 ――――死んで喜ぶ人間なんていないだろう。こんな世界・・・大っ嫌い!――――
 そして、もしも時間が少し止まったとしたら、瑞希の気持ちは一に伝わっただろう。
 「私ね、本城君の事、本当は好きなの。ずっと隠していたけど、こんな喧嘩ばっかやってる私じゃダメよね。ハハッ。でもね、 私は私なりに頑張ってきたの。普通に憧れて、クラスでいるごく普通の女子になりたかった。その為に喧嘩もしないようにした。すべては 本城君にこの気持ち、伝えたくて・・・」

【残り4人】




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