BATTLE ROYALE 外伝

第四部
フィニッシュ



57

 「前沢・・・悪いが死んでくれ。答えは出た。二人は俺に優勝しろと言ったんだよ。だから優勝する為に・・・お前を殺す!」
 地獄の中の人間はそう言った。牙を向け、銃を向け・・・。
 どういう事だ。あれはなんだ?
 ショットガンを持った忠文は焦っていた。グラウンドで玄岩を殺し、花火に気がついた忠文はすぐに花火のあがった方向へ走った。
 ただ一つだけ気になることがあった。自分でも分かっているのだが、はっきり言って方向音痴なのだ。
 なので忠文は花火があがった雑貨屋の方向へ行くつもりが、今では違う方向に走っていた。それが不運だったとは全く気がついてなかった。
 森林を抜けて、額に少し汗を掻いていた忠文の足は止まった。
 「・・・あれは・・・」
 だが、雑貨屋らしきものは見えず、ただ血の臭いが強烈に漂う草原に忠文はいた。目の前には血の池が広がっていた。まさに地獄。 地獄絵図とはこのことだと実感した。ただ、よく見ると、地獄の戦士は意外な人間だった。
 「前沢」
 その戦士の名前は「伊藤真司」。サッカーは普通にうまく、メカの天才と呼ばれている人間。忠文の中ではこのゲームが始まって最初の方で死にそうな 人間だと思っていた。まさかこんな形で生きていたとは・・・。
 真司の足元には数体の死体が転がり、その中で一人血だらけで立ちすくんでいた。更にはいつもの真司とは違う歪んだ表情。
 だが今は忠文の方が武器なら威力的に勝っている。しかし忠文は考えた。あんなたくさんの人間を殺したとしたら、 油断はできない。たとえ伊藤がハンドガンでも、なにかがあるはずだ。あんなにもの人間を殺しているんだ。やばい・・・。ショットガンでは 勝ち目がないかもしれない。
 そして真司は足を止めていた忠文を見て言った。
 「前沢・・・悪いが死んでくれ。答えは出た。二人は俺に優勝しろと言ったんだよ。だから優勝する為に・・・お前を殺す!」
 ゆっくりと真司は手に持つ銃を忠文に向けてきた。その瞬間、危険を感じた忠文は真司に背中を向けて走り出す。逃げなきゃ、逃げなきゃ。
 「ちくしょう!」
 「バン!」
 まさに一瞬。その一瞬の銃声が忠文の考えを変えた。自分の身には銃弾が当たってなく、足元の土に当たった。もう少し先に 相手を引き込んで、木々がある森林で戦うか。忠文は頭で作戦を立てながら、またも森林の方へ走った。
 もうそろそろ振り向いて戦うかと思ったその時、「バン」と言う銃声と共に忠文の体が自分の意思とは違う動きをした。
 忠文が肩に提げていたデイパックに銃弾が当たり、目の前の地面が目の前に来たかと思うと、上半身だけ転んだ。
 「て・・・めぇ」
 忠文の腕の筋肉が異常なほど動き、転んだまま体を捻らせ、片手に持っていたショットガンを後ろから追いかけてくる真司に向けて撃った。
 「ドンッ」
 「バシュ」と真司の肩がショットガンの弾で弾け飛び、その場に蹲っていた。
 「があああっ」と叫ぶ中、忠文はこれなら勝てると確信した。そう、喧嘩の経験が多い人なら分かるだろう。喧嘩をよくする人は言う。「一瞬見ただけで、勝てるか勝てないかわかる。どんな人間にもオーラがある」
 「くそっくそっ」
 不意に忠文が立ち上がってショットガンを真司に構えようとした時に、真司は肩の痛みを我慢しながら、暴走するように手に握っていた銃の引き金を絞って 撃ってきた。
 それを見て即座にやられると判断した。先ほどとは違う。全く違うオーラが真司から出ていた。どんな人間も寄せ付けない。まるで怪物の ような雰囲気がした。忠文は逃げるように体を森林へ再び向けた。いや、向けようとした。
 「バスッ」と無数に飛んでくる銃弾の中の1発が、忠文の左胸を捕らえた。「あああああ!俺は帰るんだぁ!」と、思いのまま叫びながら 忠文はショットガンを連射した。胸の痛みは急激に意識を遠退かせていく。もう、死ぬんだと思った瞬間だった。
 「ドンッ!ドンッ!」
 忠文の銃弾は真司の体を捉えた。だが忠文は自分が生きている事を確認すると、すぐに森林の方へ逃げて行った。走れば走る度に 撃たれた左胸が痛む。こんなにも痛い思いをしたのは生まれて初めてだ。ドクドクと何か体から流れていく。だが今止まれば真司が 追ってくる。イコール殺される。
 走り、走り、走る。血が流れ、血が噴出し、体中の血液がなくなっていくのがわかった。貧血なんて起こった事無かったのに、今にも起こしそうだった。
 「!!」
 突然忠文は止まった。それは紛れもなく目の前に突然人間がいたからである。
 「わっ!」
 つい尻餅を突いた。更には持っていたショットガンをその場に落とした。いや、まだ相手が誰か確認していない。忠文は目の前にいる人間の 顔を見ようとした。
 薄暗い中、その姿は女子だった。しかも後ろ姿で、顔が見えない。逃げるか、それとも落としたショットガンを拾って目の前の 人間を殺すか。
 「きゃあ」
 目の前の女子は、忠文の尻餅を突いた音で気づき、こちらを振り返った。
 「・・・くそっ!」
 そのまま手元に落ちていたショットガンを忠文は拾い、目の前に立つ女子に向けようとしたその時、ズキンと撃たれた左胸が痛んだ。
 「ぎっ!」
 ――――手に力が入らない。体が動かない――――
 「だ、大丈夫?」
 女子は顔をくしゃくしゃにして痛みを我慢する忠文に声を掛けた。同時に忠文もその女子の方を見る。
 「ぐっ・・・・」
 だが今の忠文には、視界に何が映っているのか殆ど見えていなかった。更には頭の中が真っ白になっている。もうダメだと忠文は内心思った。
 「俺は・・・俺は・・・」
 目の前に立つ女子の体をふと見たその時、意外なものが目に入った。それは紛れもなく黒く汚れた人形。人形人形人形人形。文字だけが連続して頭に浮ぶ。
 人形は、薄気味悪く、忠文の方をじっと見ていた。
 「な、なんだお前はぁぁぁ!!」
 感情の設定も狂った忠文は涙を流し、口からは涎を出しながら、そのままドッサリと仰向けに倒れた。もう、動く事なく、嘗ての喧嘩が強い 前沢と呼ばれる事もなく、今は精神障害者のように、そしてそのままの精神で息を引き取った。
 「俺はこのゲームに勝つ。俺は帰って、親の後を継がなければならないんだ」
 そんな言葉を聞くことはもうないだろう。  

【残り3人】




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