BATTLE ROYALE 外伝

BTTLE ROYALE 外伝
6―岩下愛―0



 愛は優勝した後、精神状態が不安定と言う事で精神病院に入院した。医者の 話によると重度のトラウマが原因だという。さすがに愛の親戚も仕方がないと思った。あんなことがあったのだから・・・。
 もちろんあの人形「マミー」は政府の方で引き取られた。
 病院の中にも人と人の出会いはあった。そこから回復する人も少なくないと言う。
 「ひっ!ひっ!しねぇ!」
 今でも愛の頭の中ではフラッシュバックのように、あのプログラムのことが何度も蘇った。あの神社で もしも村瀬君に殺されていたら、もしも私が人形なんかもってなかったら。
 悲しくて、悲しくて。いつも涙が溢れてくる。あのサバイバル生活よりも断然、電気が飛び交う町に 住んでいるほうが快適だ。いつでも食料は備わっている。いつでも好きなときに動ける。生きていて良かったと 思ったのはこの時だけだった。
 入院して一ヶ月が過ぎた頃、意外な人物が面会に訪れた。
 「よう、岩下。元気かぁ?」
 その声は忘れたくても忘れられなかった。病室には愛とその男だけが、二人見つめ合っていた。
 「な、何しに来たのよ!!」
 鬼月英佶。忘れない、名前と声、そして顔。
 「なんだなんだ、せっかく見舞いに来てやったのに。ほら、ケーキも」
 「やめて!あんたの顔なんて見たくない!帰ってください!」
 愛は叫んだ。この時ナースコールがあることを忘れていた。いや、忘れていたのではなく、怖くて呼べなかったというのだろうか。 その代わりに愛は大声で、他の病室にも聞こえる大声で叫んだ。
 「まあそう言わずに、ケーキ、ほらっ」
 「いやっ!」
 鬼月が愛に渡したケーキ箱を、愛は邪悪なモノを取り払うようにして、その場に落とした。その行為に鬼月は怒らなかった。
 またか。と言った顔をしただけだった。
 「あ〜あ〜。勿体無いな〜。ここのケーキうまいんだけどな・・・」
 そういいながら鬼月は、地面に落ちたケーキを手で拾いながら言った。
 「俺は今日、お前を殺しに来たんでもなく。ちゃかしに来たんでもないんだよ。本当にお見舞いに来ただけなんだ。 まあお前がそこまで嫌がるなら、俺は帰るよ・・・」
 「・・・」
 愛はじっと、地べたからぐちゃぐちゃになったケーキを拾う鬼月を見つめていた。なにか違う。だが鬼月は鬼月だ。あの忌々しい。 最初に阿藤、ゆーじ先生を殺し、生徒の殺し合いを楽しんでいた人間。
 「俺もなぁ、あの日以来、職を失っちまってな・・・。まあ一応今はバイトして生活を賄ってるんだけどな、 かなり反省してるよ、あの日の事は・・・」
 「教官じゃ、なかったの?」
 「無期処分食らっちまってな。へへっ。それから放浪とする俺に一人の愛する人間が現れたんだ」
 愛はしっかりと聞いていた。一応聞いておこう。この鬼月、いや、鬼が苦しむ出来事を。
 「その人と婚約までしたよ。それで分かったんだ。お前らが言う、本当の信頼というものをな・・・」
 いきなり鬼月は両手に潰れたケーキを持ったまま立ち上がり、そのまま近くにあった緑色のゴミ箱へケーキを入れた。 それから持ってきたハンカチをポケットから取り出し、クリームで汚れた手を拭き、そのまま膝をついた。
 「申し訳ない」
 誰がどう見ても、土下座だった。愛は目を見開いた。あの鬼が土下座?うそ。
 病室の中では沈黙が流れた。
 「・・・・い、今更遅いですよ・・・」
 はっとしたように鬼月は愛を見上げるように見た。本当に顔には反省という文字が見える。
 「あなたがいくら謝った所で!何の解決にもならないんです!今頃申し訳ないですって?今じゃなくて、 なんであの時謝ってくれなかったんですか!もう、帰ってこないんですよ・・・私が知ってるE組のみんなは・・・・」
 そう、いない。あの日以降、一度だけ愛は校長に連れられて第四中学に行った。E組の教室は殺風景な 感じがして、更にはあるはずの机はなかった。黒板には文字がすべて消され、カーテンが閉められている。 いつものE組の教室ではなかった。
 そこで、愛は校長から卒業証書を受け取った。「おめでとう」とその時ばかりは校長の口からなかった。だから愛も「ありがとう」とは 言わなかった。
 もうみんな死んじゃった。
 生き返らないし、なにもない。からっぽ。
 「悪かった・・・・。俺にはもう他の言葉は見つからない・・・。ごめんなさい・・・」
 「・・・早く・・・帰ってください」
 愛がそう鬼月に言う前に、鬼月の方から背を向けて病室を去っていった。だが、去る際に鬼月はぼそっと言った。
 「『この戦いで得たたくさんのものを生かして、強く、逞しく生きてほしい』この言葉覚えているか?俺も 廃校で聞いてたんだけど、本城が伝えたかった言葉・・・」
 「・・・さあね・・・」
 愛は下を俯き、目を閉じた。愛の返事を聞くと鬼月の廊下を歩いていく音が聞こえた。
 忘れてなんかいない。忘れるわけない。あんな大切な言葉。しかし今だ一が残した『この戦いで得たもの』の意味が いまいち理解できなかった。あんな殺し合いで得たものとはなんなのか?
 鬼月が去って、愛はそのまま布団を被って眠りに落ちた。自然に涙が流れたが、不思議と声は出なかった。
 愛はそのまま病院で16回目の誕生日を迎えた。その間、生きていた母と父は、死んだ生徒の親に謝罪しに行き、 時には顔に傷を作って帰ってくる時もあった。
 たくさんの残し物をあの島で置いてきた。
 私はこれから強く生きていかなきゃいけない。
 それが死んだ、大切なクラスメイトの願いならば。
 17歳の夏。
 愛は退院した。このまま普通に生活してもよいと、医者からも言われた。それからすぐに近所の事も考え、 岩下家は瀬戸内海から離れ、京の都へと引越しをした。その京の都も都会ではなく山里近い所に移り住み、 その近くの高校に通った。
 新しい生活、新しい自分。そう言い聞かせながら愛は立派に三年間通った。
 だが愛が高校三年の時、突如転校してきた人物がいた。その名前は『本瀬一也(もとせ・かずや)』 あの、村瀬純也と本城一の名前を持つ人間だった。
 その時ある噂が流れていた。『あの転校生って、前のプログラムの生き残りらしいよ』
 噂は広まり続けたが、誰一人として本瀬本人にそれを聞く人間はいなかった。勿論愛も・・・。
 3年間の高校生活を終え、後に愛と本瀬は付き合い、1992年夏、19歳という年齢で結婚した。お互いの両親も祝福してくれたし、 なんといってもお互い同じ境遇だったからだと、愛は思った。もう一つ付足すならばこの理由が取り上げられる。
 髪の毛は少し長めだが、顔が男らしく、村瀬淳也に性格がそっくり。何処となく本城一に似ている。 そう、まるで愛と出会う為に生まれてきた人間みたい、と。
 強く生きよう。
 逞しく生きよう。
 愛は心に強く誓い、子供も身篭った。その時誰よりも祝福してくれたのが、本瀬一也だった。
 「この子が生まれた時、たぶん・・・。いいえ、きっと強く逞しい、貴方に似るわ・・・」
 やっと愛は分かった。あの懐かしい思い出となったプログラムで。あの殺し合いで"得たもの"とはなんだったのか。
 「・・・そして私があの戦いで得た"勇気"を生まれてくるこの子に与えてあげなくては」

 BATTLE ROYALE GAIDEN IN SINCE AI IWASITA IS HAPPY END





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