BATTLE ROYALE 外伝特別編

〜グロムハーツの少年〜




  いつもご愛読していただいてありがとうございます。おかげでこの小説も大分形がなってきました。
これも名前を使わせていただいた皆さん、そして掲示板に書き込みしてくださった皆様のおかげだと思っています。
よく掲示板には目を通すようにしていますが、新しい書き込みがあるとほんと嬉しいです。
更にはその書き込みで勇気付けられます。今回このページをご用意したのは、唯一の経験者であり、他のプログラムでの優勝者「早名誠」の 善通寺第四中学に転校する前の話を書きたいと思います。以前から早名には隠された事がたくさんあります。
なぜゲームに乗っていない人間を集めようとするのか?そして高月沙紀に話していた「プログラム優勝者の集まり」とはどういった集まりなのだろうか、 そう言ったところを少しだけ明かします。
こんなページ見たかねぇよ!と思う人もいると思いますが何卒これは私の自己満足だと思って下さって結構です。




  「ただ今から岡山県岡山正連中学のプログラム優勝者、早名誠君にインタビューしてみたいと思います。早名君、第○回の優勝した感想をどうぞ」
 首に赤いあざをつけ、両耳にグロムハーツのピアスをつけた誠がそこにはいた。ピアスがしてある耳の皮膚からは、血がかさぶたになっている。 そして誠の顔はなんだか死んでるような表情をしていた。
 「早名誠君?あの〜、感想をカメラに向かって言ってくれるかな?」
 髪が短めの女リポーターが、誠にマイクを向けていた。そして、数秒の時間がたち、誠は口を開いた。
 「・・・・・優勝・・・・・優勝なのか・・・ ああ・・・・なんだか変な気分です。僕は人を殺した・・・・ふっ」と言って、カメラに向かって奇妙な笑みをした。
 そして女リポーターがさらに誠に質問した。
 「早名誠君?さきほど優勝特典として総統陛下直筆の色紙と、生涯の生活保障が与えられましたが、色紙の方を見せてくれますか?」と言う質問に対して、誠は手に持っていた総統陛下直筆の色紙を、カメラの前で、半分に思いっきり破いた。
 「あっ!」と、船に乗ってる誰もが驚いた。横にいた専守防衛陸軍兵士達も目を大きく開いていた。
 グロムハーツの少年の顔は、さっきとは別人のように、カメラに向かってメンチをきっていた。そしてボソッと誠は喋りだした。
 「・・・・俺は、人殺しだ。俺は、友達を殺した。やらなきゃやられる・・・だから殺した。だから今、死んだみんなの分まで生きる・・・色紙も生涯の生活保障もいらない。俺はこのゲームで大切な事を学んだし、もらった」
 船に乗ってる誰もが静まり返った。多分誠のコメントより、総統陛下直筆の色紙を破いた事にだろう。
 そんな中継から、街の大きなビジョンに映しだされたグロムハーツの少年に、一人のちゃらちゃらした少年達がガムを噛み、ニヤニヤしながら言った。
 「けっ。やってくれるぜ。色紙を破るとはすげえな。きっとあいつ、射殺されるか、またゲームに強制的に参加させられるぞ」
 ゆらゆら揺れる船の上で、女リポーターがカメラに向かって「以上、第○回優勝者早名誠君ののインタビューでした」と慌てて言っていた。そしてやはり、誠は、死んだような顔をしていた。 今はただ揺れる船の上で、血がべっとりついた制服と、土で汚れた銃だけが、これまでの悪夢を物語っていた・・・。
 誠の両耳についているグロムハーツのピアスが、たくさんの死んだ生徒の叫びの様に、キラキラと銀色にひかり輝いていた・・・。

 突然のインタビューの後、誠は虚ろ虚ろながら数時間前のプログラムを思い出していた。岡山県岡山正連中学・・・・。
 そう、あれは恐怖としか言いようがない。楽しい修学旅行が一瞬にして地獄行きのバスに変ったことから始まった。
 岡山県岡山正連中学3年C組出席番号男子十番の早名誠はクラスでも大人しい組に入る人間だった。普通な中学生活を送り、そしてこれからも普通に生きて 普通に死ぬはずの誠は、義務教育の最後の1年で地獄に落とされた。
 修学旅行の当日、運動場に集まった3年団は皆楽しそうに前後のクラスメイトと話をしていた。内気で無口っぽい誠は、よく話す額縁が細いめがねをかけた浅見博人(男子二番)が 自分と同じく前の列で独りポツンと外を眺めているのが見えた。誠と博人は お互いのいいところを知っていた。それに気があう親友で、ゲームやいろいろな相談を聞いたり聞いてもらったりしていた。
 博人は頭がよく、誠とは対照的にベースが明るい。それに友達付き合いもいい。運動神経を除けばすべてがいい奴だ。
 うきうきわくわくで3年生はバスに乗った。クラスごとに乗り、バスは高速道路を走っていた。長旅になりそうなのでとC組担任の大橋直子は バスの中でマイク片手に喋った。「眠くなったら寝てもいいからね」
どうでもいいことだがかなり若く、そして人妻だ。
 わいわいとバスの中ではクラスメイトがはしゃいでいる。誠は博人の隣に座り、雑談をしていたがしばらくして何か異変を感じた。徐に景色を眺めていた 誠はバスがUターンした事に気がついた。それは正しく変だった。道が間違えたならそれでいいが、かなりのUターンだった。学校に戻るのか?という具合に バスはもと来た道路を走っている。
 その異変に誠は隣にいる博人に話し掛けた。だがその博人は何故か眠っている。と気づいた時にはバスの中が妙にシ−ンとしていた。なんだろうと思うものつかの間、 誠の意識が飛んだ。
 眠りから覚めたところはどこかの分校。そして首には銀色の重い首輪。プログラム教官のナオミが、担任の大橋直子の死体を運んでくると一気にクラスメイトの 表情が変るのがわかった。初めに一人二人逃げようとしてクラスメイトが殺され、あとの40人はデイパックをもって分校を出て、それから本当の地獄が始まった。
 友達など殺す事の出来ない誠は只管どこかに隠れて逃げ回った。逃げて逃げて逃げ回った挙げ句、親友だった博人に会い、脱出をするためにいろいろと 一緒に行動を共にした。博人の頭脳で雑貨屋にあったオモチャのトランシーバーで何とかうまく公共の電波に乗り、助けを呼ぼうとしたときに博人の首輪が 爆発して親友が呆気なく死んだ。誠は泣いた。それまで感情を徐に表に出すタイプではなかったがそのときだけ大粒の涙を流して泣き叫んだ。 そして博人が耳につけていたグロムハーツのピアスを取り、無理やり自分の耳に穴を開けて付けた。血がたらたらと出たが、そのピアスを付ける事で博人の形見にもなった。
 それからまた逃げ回り、運良く廃ビルでゲームに乗っていないクラスメイトと出会ったがこれも突然の狂った生徒、南桐豪(男子十三番)の襲撃で誠と青山薫(女子一番) 以外のクラスメイトがそこで爆死し、南桐も自爆。
 やがて時間が過ぎ、既に生き残っているのは誠と薫だけだった。どちらとも銃を所持しておりいつ撃ってもおかしくない状況だった。と、薫が真っ先に誠に向かって 撃ってきたが狙いは外れ、太ももに当たった。瞬時に誠も銃の引き金を引き、薫の頭部に銃弾を埋め込ませた。呆気ない優勝の瞬間だった。太ももの痛みを堪えながら 誠はプログラム教官と専守防衛軍の手を借りて帰りの船に乗った。なぜか分からないが銃で人を殺した事によって誠の精神状態は狂っていた。
 それから船で総統陛下直筆の色紙をカメラの前で破った。そのときは既に精神状態がはっきりと元に戻っており、これぐらいが死んだクラスメイトに 見せてやる政府に対しての小さな抵抗だった。

 その夜、誠はある部屋に案内された。そこには専守防衛軍兵士が数人と、小さな机に椅子が3つ。1つはプログラム教官のナオミが座っていた。中には誠を警戒して 拳銃を持つ兵士が2,3人いたが、後は勝手に本を読んでいたり、誠の方を 見つめてたり、居眠りをする兵士などさまざまだった。
 「よくやったわね早名君。あなた優秀よ。けどもうちょっと人を殺して欲しかったわ・・・。でもね早名君。あれはまずいんじゃない?」
 なにか資料に目を通したあとナオミは、ちらちらと誠を上目遣いで見た。ナオミの顔は美しい顔をしている。しかし逆に言えば凄い悪い顔だ。誘惑する顔に 危機感を感じる香水の匂いがする。さわやか系の香水しか匂ったことない誠だったが、ナオミの 香りはかなり高級な香水の匂いだとわかった。
 「まずい・・・?何のことだ?」
 冷静さを取り戻していた誠は冷静且つナオミにメンチをきりながら喋った。
 「あなたまだ気づいていないの?あの島から離れる時に、カメラに向かって総統陛下直筆の色紙・・・破ったでしょ?あれどういう意味なのよ」
 「・・・あ?死んだ友達に送るせめてものプレゼントだ」
 「プレゼント?あれを友達にあげたかったの?」
 誠は半笑で答えるナオミに腹が立った。
 「いいや。死んでいったみんなはこの国を怨んで死んでいったんだよ。だから俺が代表として政府に唾を吐いてやったんだよ!」
 その場にいた専守防衛軍がピクリと動いた。かなり動揺しているらしい。しかしナオミはニコッと笑うと、裏ポケットから一つの拳銃を取り出し、 いきなり誠の額に銃口をあてた。
 「何のまねだ?」
 「たとえ優勝したとは言え、そこまで政府が嫌いならここで死んだほうがマシよ。あとあと大変なことが起きるわ。私はそれを知ってて言ってるのよ。 どうする?これは"警告"よ」
 悪い笑顔だ。こんな人間ばかりが幸せになるのだろう。誠は両手を挙げて降参した。やはりせっかく優勝したんだ、ここで死ねば死んでいったクラスメイトに 悪い。
 「俺が悪かったよ。政府尊敬。大東亜共和国バンザーイ・・・」
 「・・・分かればいいの」
 ナオミは拳銃をまた裏ポケットに仕舞い込むとなぜか身の上話をし始めた。
 「早名君。今まで私ね、あなたみたいな優勝者は初めて見たわ。私が見たことある優勝者はみんな精神状態がおかしくなった女の子や、 かなり感情表現が少ない男の子よ。私も元教員だったの・・・。この国を愛す事だって若い頃はできなかったわ。けどね、あるとき自分が生まれた事は この政府、この国の為に生まれてきたと思う出来事があったの。でもどの国にも同じ様に、国を愛する者がいれば、国を批判する者もいるわ。永遠にそれは消えないと 思うの。そこがあなた達の選択よ。この国の事をまず知ってから・・・、それから大東亜共和国を嫌いなさい。いいわね・・・」
 返事はしなかったがきちんとナオミの言葉は誠に届いた。分かっているが、本当にこのプログラムをする意味がわからなかった。決めた事だからやらなきゃ いけない・・・本当にそれでいいのだろうか・・・。俺はこの国の子供だから母体である大東亜共和国の決めた事、つまり政府が決めた事には服従しなければ ならないのだろうか?そこで改めてプログラムのとても恐ろしい記憶が蘇った。

 訳のわからない部屋に連れ込まれて、その数時間後にやっと自分の自宅に専守防衛軍のジープで帰ってきた。破った総統陛下直筆の色紙と、プログラムの 誠の行動が安易に書かれた紙が帰り際に渡された。破った総統陛下直筆の色紙は家の玄関に置いてあった燃えるごみの袋に入れた。
 ただいまと言おうと玄関のドアを開けた。しかし玄関には家族全員が正座して誠を見つめている。母に父、叔母に叔父、それに弟。
 「た、ただいま・・・?え?ど、どうしたのみんな揃って?」
 誠が驚いていると、母が突然泣き出した。次に叔母も泣き出した。みんな悲しい表情をしていたが、一番に父が誠に言葉を掛けた。
 「・・・誠、お帰り」
 その父の一言に誠の目から大粒の涙が零れ落ちた。お帰りと口々に呟く母や叔母、叔父に弟。これが家族。生きて良かったと思う瞬間だった。
 あとは事の次第で家の中は凄いパーティー会場となっていた。大好物の食べ物からケーキ、それから母が突然抱きついてきてよかったよかったと 何度も泣き叫んでいた。その母の暖かさに誠は幼い頃に戻った。その時だけは大いに泣いた。泣いて泣いてベソもかいた。
 祝福パーティーは夜中の2時まで続いた。なぜだかみんなプログラムの事は一切口にしない。不思議ながらも誠でさえもプログラムの事を 忘れていた。
 夜中睡眠中、家の電話がピロピロ鳴き止まない。ドンドンドンと誰かが玄関を叩く。なぜ家族は出ないのだろうと思ったが、すぐに誠は理解した。玄関を 叩くのは複数の大人で、息子、娘を返せと何度も怒鳴っている。更には殺してやるとまで来る。その時、自分が帰ってきて本当によかったのだろうかと思った。
 そして思った事は、この町から離れよう・・・だった。この岡山にいても仕方がない。家族にも迷惑が掛かる。
 翌日誠は親から多額の資金を貰って 家を出た。まさに玄関を出ようとした時に、母親が抱きついてきた。ぎゅっと強く抱きしめられ苦しかったが、あとから母はある手紙を誠に手渡した。
 「誠・・・あんたがこの家に帰ってくる前に、この手紙が来たの。良かったら行ってみなさい。言っておくけど、お母さんとお父さんはいつでも あなたの帰りを待っているから、あなたが気を使わなくてもいいのよ・・・」
 そう言って母が渡してくれた手紙は『早名誠様』と書かれてあった。封は誰かが開けた形跡があり、中身は手紙が一通入っていた。玄関を開けて中の手紙 をみながら外に出た。外はやはり死んでいったクラスメイトの親御が誠に怒りをぶつけている。死んじまえ!殺してやる!お前みたいな奴がなんで 生きてるんだ!
 家を出てから誠は手紙に夢中だった。しかし歩く足は止めなかった。
 『こんにちは早名誠様。この度は岡山県岡山正連中学プログラム優勝おめでとうございます。
この手紙は、実は政府とは全く関係ありません。この手紙はプログラムに優勝者した人だけに送っている手紙で、今回の内容は恒例となっている【優勝者の集会】 を開催いたします。詳しくはこの場所に来て下さい』
 地図の一番下には、誠の家から赤線で何処を通っていくのかと言う詳細が書かれてあった。家からはそんなになく、駅に近いところだ。
 おかしな手紙を読みながら誠はそこに行ってみようと思った。実際行き先など決まってなかったし、自分を必要としているなら政府であれ誰であれ 行ってやろうと逆に誠には挑戦状のような形で手紙を読み取った。
 目的地は駅の前にある自動販売機と書かれてあったが、誠は今そこに着いたばかりだ。たしかに目印は自動販売機になっている。だれが来るのかも一切書いていない。 誠があたりを見渡していた時だった。隣でいた赤い帽子をかぶった女が話かけてきた。
 「もしかして早名君?そうだよね?早名誠君だよね?」
 「あ、はい・・・そうですけど」
 女は帽子を取って握手をして来た。見た感じ誠と結構年が近いように見える。女は自分のことを誠と同じプログラムの優勝者だと言った。名前は 桐島瞳(きりしまひとみ)、18だと言う。髪はロングで歯並びがいい俗に言うお嬢様系で、服が大人っぽく、ワンピースとミニスカートを着ている。瞳は誠を参加会場まで案内してくれると言う。理由は外部の人間を勝手に入れない為らしい。
 「それじゃあここに来てくれたと言う事は優勝者の集会に参加してくれると言う事ね?では私について来て・・・」
 そういって辺りを一度見渡すと駅のホームには行かず、どこかの路地裏に歩いていった。一体どこに行くのだろう・・・。
 瞳について行くとある駐車場に2台の黒いベンツが止まっている。「これに乗って」と瞳は1台のベンツに近づき、後部座席のドアを開け誠を導いた。これに乗れと? ああわかったよと誠は、やけくそで言われた通りベンツに乗った。
 中には運転手が一人いてかなり若い。それから左のドアから瞳が乗り込んできた。なぜ助手席に座らないのか不思議だった。すぐにベンツは発進した。車の中は 妙な曲が流れている。クラッシックだろうか。
 「早名君、これから東京に向かうからまる一日掛かるわ。だから寝てていいのよ。お腹が空いたら途中で何かパーキングで買うから心配しないで」
 「東京だと?そこに会場があるのか?」
 「ええそうよ。そこにいけば歴代の各地の優勝者がいるわ。心配しなくてもみんな正常な人ばかりだから。あなたの命を守る保障はする。 だからどんな要求でも私のできることならすべてするわ」
 甘い誘惑で瞳はミニスカートを少し捲った。誘っているのか?誠はため息を吐いた。
 「いや、なにもいらない・・・俺は寝るよ。着いたら起こしてくれ」
 「分かったわ・・・。なにかあったら何でも言ってね・・・」
 誠は緩やかに揺れるベンツの中で、静かに目を閉じた。なにもかもにおさらばしたい・・・そんな気持ちだった。

 ゆらゆらと体が揺れる。これは車の揺れではなさそうだ・・・。
 「起きて・・・早名君、着いたわよ」
 誠の耳にそっと呟くような甘い声が聞こえた。瞳が体を揺らしているらしい。もっと強く揺らして欲しかった。いくら女とは言えこれがプログラム優勝者か? あまりにも力がない瞳に、逆に意識がはっきりとしてきた。
 「・・・ん?な、なんだ?」
 「着いたわ。東京よ」
 東京?誠は窓からは太陽が沈み、ネオンがちかちかと点いた一つの町が見えた。ここが東京・・・。
 「もう着いたのか?」
 「もうって早名君よっぽど疲れていたのね、まる一日ぐーぐー寝てたわよ」
 「そうなのか・・・」
 瞳は誠の体の事を心配してだろうか、白い紙袋からハンバーガーと缶ジュースを取り出して差し出した。かなり冷めてる。
 「はい、ハンバーガーとジュース。少しは食べないと、こっちもだてにベンツ2台で来た意味ないしね・・・」
 「あ、ありがとう・・・。ベンツ2台?どういう事だ?」
 「まあ歩きながら話しましょ」
 瞳は左のドアから降りた。誠も空腹の腹にハンバーガーを押し込みながら右のドアから車を降りた。外は冷え込んでいる。黒いベンツがチカチカと点いている ネオンによって照らされている。今何時なのだろうと腕時計を見た。――――18時29分――――ここはどこかの街路地のようだ。すぐ側には 街路樹がいくつも植えられてその気高い色鮮やかな花を咲かせていた。
 「おい、ここ東京の何処なんだ?」
 「そんなことは気にしなくていいの」
 瞳が一歩リードしながら先頭を歩いていく。後ろを振り返ると運転席にいる若い男がタバコをふかしている。その横にはもう1台黒塗りのベンツが止まっていた。 じっと見ている暇はなく、瞳と誠の差はどんどん広がっていく。ハンバーガーを食べ終わり、缶ジュースの栓を開けると、そのままごくごくと飲みながら歩いた。 ここは何処だろうか・・・、あたりは殺風景としている。東京は人が多いと聞いた事あるが誠の目の前はお爺さんお婆さんが1,2人歩いているだけだった。 と、誠は左手に建つ小さな工場を見た。なにやら看板が貼ってあり『池袋鉄工所』と書かれている。
 「早名君、急いで・・・、かなり遅れているのよ」
 瞳は手招きをして急いでいる。一体自分は何の為に来たのだろうと一瞬戸惑ったが、すぐに思い出し、残り少ない缶ジュースの缶を近くにあった自動販売機 の缶捨て箱に捨てた。
 「ここよ・・・」
 駆け足で瞳の横まで走って来た誠は瞳が指差す方を見た。そこには縦長いビルが建っている。一つ一つ看板がついていて、1F「大木探偵事務所」2F 「喫茶店流」3F「藤田ダンス教室」4F「メディカルセラピー」5F「珍雑貨マルボローン」と各自に書かれてある。どうでもいいがこれに なぜ自分が必要なのだろう。どれを見ても関係ない店ばかりだ。
 「おい、ここに入るのか?」
 「ええそうよ。早く着いてきて・・・」
 言われるがままに誠は瞳について行った。ビルの中は真っ白な空間といった感じだろうか、なんだか不気味だ。と、瞳は階段の横にあるぽつんと設置された エレベーターの下のボタンを押してエレベーターに乗った。なぜ下に行くボタンがあるのだろうか・・・。
 「早く乗って・・・」
 エレベーターに乗るとすぐに動き始めた。一体下には何があるのだろう。エレベーターの階層表示部分を見た。やはり1Fしかない。それより下は数字が ない。どういう事かさっぱり分からないまま本当にエレベーターは下に下りている。
 チンという音と共にエレベーターのドアが開いた。「ここよ」と瞳は強引に誠の手をとって歩いた。目の前に見えたのは、長く白い通路だった。 窓もなければ飾りの一つもない。辺りを見渡しながら歩いていくと、瞳の歩く速度が次第にゆっくりになりそして止まった。
 「早名君、ここが優勝者の集会会場よ。みんな今日あなたが来てくれるんで集まってるわ」
 「・・・」
 瞳は握っていた誠の手を離して、行き止まりのところにある真っ黒で分厚いドアを3回ノックした。すると数秒ほどで中から何者かが現れた。
 「よう瞳、やっと来たか・・・入れよ」
 中からは毛糸の帽子をかぶった男が出て来た。男は赤い服装で身を包んでいて、髭が生えているのもあって三十代に見える。瞳にあいさつをすると 誠に目を向けて「これがあの早名誠君か〜」と喜んでいる。
 男に案内されるままに瞳と誠は部屋の中に入った。
 「ジー」
 誠が思っていた部屋とは全然違っていた。もっとパーティーらしい華やかな部屋だと思ったが、部屋の中に入ると葬式の後のような静かさだ。 中には長い机が設置されてあり、それにずらーっと男や女が座って静かに誠を見つめている。部屋の電気は薄暗く目が悪くなりそうだ。まるで 大東亜総会議のように座っている各自の人間が偉く見える。見たかんじ大半は女が多い。と言う事は優勝者は女が多いと言う事か?
 「ここに座って・・・」
 瞳が静かに誠を誘導する。瞳は誠の横に座り、誠も瞳の隣の席に座った。座った瞬間ふわっとした椅子の感覚が気持ちよかった。目の前には誠も含めて みんな小さなマイクが置かれていて、飴玉とお茶らしきものが入った湯のみが置かれている。
 「早名誠君、ようこそ集会へ。緊張する事はないよ。ここにいるのはみんな君と同じプログラムで優勝した者達だ。そして私の名前は 花壁と言います」
 先頭を切って喋ったのは、誠からは端から端まで離れている席に座る男性だった。風貌はこれまた若く、凛々しい顔立ちだ。たぶんこの花壁という人が 集会のお偉いさんだろう。
 「実は本当はこの集会に君と同じ時期に優勝した中学生を呼んでパーティーを行なうつもりだったが、事態は急変した。君のインタビューは ここにいる全員が見たよ。かなり強烈なパンチを政府に食らわしたね。まさか色紙を破るとは、君が初めてだよ。ただそれで問題が出ている」
 「問題?」
 誠が花壁に問い掛けると、誠から見て左側の4つ先の席に座るある女が呟いた。女は口紅が印象的だ。年齢は20代後半ぐらいか・・・。
 「そう、あなたはあの色紙を全国放送で破いた事で、政府はあなたを処刑するわ」
 「!」
 なんだと・・・と言いそうになったがあまりにも驚いて声が出ない。それに対してまた花壁が静かな部屋の中で言った。
 「早名君。本当は処刑されている所だが、こうやって君は今現在生きている。だから処刑は免れたと考えていい。安心して、私達は 政府とは関係ないから。あえて反政府として名乗っているがね。軽く話をすると私がまずこの集会を開いたんだ。私の父は一般的に言う偉い方に いる政府だ。それでプログラムの大東亜科学技術省に所属している。あるときはプログラムの実施会場に自ら出向いて、生徒の行動を 確認するメインコンピューター管理もやったことある。私はそんな父を尊敬しつつ、怨んでいる。実は私も勿論プログラムの優勝者だったんだけどね、 経験をしてプログラムがどれだけ恐ろしく残酷なものか知ってからは、父に内緒で政府に乗り込んだことがある。その当時は同じ市に住んでいた優勝者と 行き、プログラムの極秘情報を盗んだ。とにかく小さいものから大きいものまで情報を掴んだんだ。だけど帰り際にもう一人の友人が見つかって殺された。 その時逃げた自分に腹が立ち、もうこんな事はさせないとこの集会を結成した訳なんだ。初めに言ったが、 私達は本当に政府を怨む人間だ。安心してくれていい。この東京の半分はすべて私達が乗っ取っているし、警察も協力してくれている」
 花壁は湯のみを口に近づけて一口飲んだ。なぜかそのときに部屋にいる人間全員がプログラム優勝者だなんて改めて想像がつかなかった。
 「花壁さん・・・。俺はどうなるんでしょうか?処刑されないと言うのだったら・・・・」
 「うん、それは一つしかない。早名君のプログラム開始と終了の情報をここにいるみんなが必死で集めてくれたよ。それに政府極秘情報もね。それによると 君はまたプログラムに参加することになるようだ。だからみんなよりも先に早名君を呼んだ。他の地域の者はすべて優勝特典を貰ってそのまま家に帰った人達だが、早名君は 色紙を破ってしまった事で政府は怒りを露わにしている。それで臨時に取り入れた情報によると、早名君は数ヵ月後にプログラムが行なわれる香川に転校させられる」
 「香川・・・」
 「うん。もう一度殺し合いをすることになるが、私達がそんな事はさせない。情報だけならたっぷりと仕入れる事が出来る。だから行動を起こしてゲームを 中断して脱出するのは早名君自身だ」
 「でもどうやって?」
 薄暗い部屋の中でつい大きな声で叫んでしまった。今になってまたプログラムの恐怖が蘇ってくる。
 「早名君も経験して知っての通りプログラムには銀色の首輪が各生徒につけられているはずだ。その首輪を外す方法を入手している。少し必要な道具が 要るから・・・」
 そういって花壁は横にいる女に紙切れを渡した。その女はまた隣にいる男に渡し、最終的に誠の元へその紙切れが届いた。すぐに内容を見た。 内容は『首輪ガダルカナル取り外し作業』と題されていて、首輪の写真と模写した断面図、そして取り外しに必要な道具と仕方が書かれている。
 「その紙はくれぐれも転校する学校には持ち込まないようにしてくれ。もし見つかると政府に殺される。だから覚えたら家でも何処でもいいから燃やして 土に埋めてくれ・・・」
 「は、はい・・・」
 しかし一つ誠には気になったことがあった。
 「花壁さん、俺が香川に行くのなら、その先で会う生徒にプログラムの事を知らせてやればすべて解決するのでは?」
 すると机をバンと叩いて叫んだ男がいた。ロンゲの髪の熱血君のような人間だ。
 「馬鹿かお前は!生徒に言ったら逆に噂が広まって政府がそのクラスぶち殺す形になるんだぞ!」
 「柳原君、落ち着いて・・・」
 花壁は少し黙り込んで誠に呟いた。
 「早名君、これだけは言っておくが首輪を外す方法を知っていても、すべての生徒が脱出できるのは100%不可能だよ。早名君がプログラムで出会った 『この人は助けてあげたい』と言う人にだけ実行するんだ。いいね。判断はすべて君がすることだから慎重にやらねければ、君自身が殺される可能性もあるんだ。 すごく残酷な言葉かもしれないけど、これは事実だから・・・。うん・・・ と言う事で後は任せた」
 花壁が隣にいた女に言うと、女は席を立ち上がり、花壁の後ろに周った。なにをするのだろうと見てるとなんと花壁は足がなく、車椅子に乗っていた。 それを後ろから押している女と花壁は、ドアの方に行くと出て行った。出て行く際、誠をチラッと見て「いつか私達がプログラムというものをこの世から なくして見せるから・・・。頑張って脱出してくれ・・・誤解してほしくないから言うけど、僕達は君だけが脱出しても、何の歯痒さも持たないから・・・」と言った。
 花壁と女が出て行ってからは、なぜか部屋が明るくなった。明るくなったとは言えまだ部屋は薄暗いが、今まで一言も喋らなかった人間が急にわいわい話し出した。 肩の荷がおりたと言うのだろうか。
 「お前が早名か〜。見たぜ!かっこよかったなお前!」「早名君ね?私あなたを見て度胸あると思ったわ!」「すごいじゃない」「君すごいな」と 急に喋りだした。みんな誠に近寄ってきて握手を求める者や大笑いする者もいた。あの色紙を破いたことがそれほど政府に影響を与えたのかと少し 驚いた。
 「はいはいはーい、もうお仕舞いよ。本当は今日集会の日じゃないんだから」
 「いいじゃねーかよ山口!早名はもしかして次にはこれないかも知れないんだぞ!今夜はぱーっとしようぜ!」
 その言葉に誠は一瞬固まった。そうだ。俺はまたあの椅子取りゲームをやらなきゃいけない。しかし何故だろうか。何故にも優勝者はこんなに明るい?本当に クラスメイトの死を見てきた人間か?
 「まあそうね。今夜は盛り上がりましょう!」
 「おーしそれじゃあいつものホテルに集合だ!でも帰りたい奴は帰っていいぞー」
 「なんだよ松、お前酒が飲みたいだけじゃねーの?」
 誠はわいわいとドアを開け出て行く男達の後姿を見ながら隣に座る瞳に話し掛けた。もうこれは集会ではなく同窓会だ。
 「いいのか?ホテルとか政府に見つかるんじゃないか?」
 「あなたは何の心配しなくていいの。ちゃんとこの区は私達の仲間が大勢いるから。警察もホテルの従業員もみんな味方よ。 それで大きな事件を起こしたくない 政府はあえてここには来ないの。まあ今のところ政府がダメージを受けた事は一回もないからね、政府側も知っていても放置するでしょうね。 だからあなたはなんの心配もしなくていいの」
 そうなのか。花壁という人物はどのぐらいの勢力をもっているのだろうか。そう思いながら誠は瞳と一緒に部屋から出た。
 ビルから出ると、腕時計の針は既に8時を指している。瞳は時間は気にしちゃだめと言わんばかりに誠の手を取り、リードする。これから行なうパーティーは 自分のレクイエムなのだろうか。お別れの儀式のようであまり気が乗らなかった。
 ホテルに入った誠はその綺麗さに驚いた。一泊止まればかなりの料金を取られそうな所だ。そんなことを考えていると、瞳が耳元でそっと呟いた。
 「あのね早名君、さっきいた花壁さん、あの人もプログラムの優勝者って言ったよね?」
 「ああ。それが?」
 「あの人実はプログラム内では凄い狂ってた政府の異常者リストに乗ってるんだって。噂ではクラスメイトの半分は殺害しているらしいわ。それにIQが175って 聞いた事あるわ」
 かなりショックな言葉だった。本当にあのやさしそうな人が?と誠は自分の心に問い掛けていた。そうこうしている内に、ホテルの宴会場の中にいた。 豪華なディナーにありつく男や、酒をビンごとラッパ飲みする男、それにペチャペチャと話をする女が目につく。先ほどとは打って変わって明るい部屋のおかげで どういった人がいるのかすぐに分かった。下は誠と同じぐらいの人間で、上は40代の男も一人いた。皆それぞれの衣装をしている。学生服や 私服、はたまたヤクザ風の服装を身に纏った人もいた。
 「早名君、なんでも好きなもの食べてね。飲み物はそこら辺にある物飲んで。もしなかったら従業員に頼めば出してくれるから」
 そう言って瞳は女の子が集まっている所に行ってしまった。いくつも並んだテーブルには豪華な食べ物が置かれていた。誠は目の前にあった皿で、 そのまま近くにあったサイコロステーキをつまみ、そして皿に取った。
 「こんにちは」
 突然後ろから声をかけてきた男がいた。誠は振り向きざまに「あ、こんにちは」と挨拶をした。見ると男からは清楚な感じが漂い、髪を後ろで束ねている。 服装は上下真っ黒な服装だ。いや、喪服のようにも見える。
 「君が早名君だよね」
 「はい・・・」
 「君の行為は反政府には大いに届いたと思うよ。一応僕も君がこれからする、脱出に成功した人間なんだ。あ、申し送れました、僕は柳瀬明です。よろしく」
 誠は明の手を取り握手を交わした。
 「柳瀬さんは脱出した人なんですか?」
 「うん。実は僕だけが唯一の脱出した人間なんだ。9年前かな・・・。僕は今度君が転校することになる香川にいたんだ。それでもって友達2人と 脱出を試みたよ。その頃は首輪の外し方やこの集会などなかったけどね」
 「じゃあ、どうやって逃げたんですか?」
 誠にとって明の存在は大事だった。転校する香川のプログラム経験者が今目の前にいる。なにか情報を入れておかないと・・・。
 「それは天候だ。天気の方のね。9年前にプログラム会場に突如雷雨が降ったんだ。まあ詳しい事は友人がしたんだけどね、その雷雨を利用して 首輪に誤差動を起こさせた。それで簡単に首輪は作動しなくなったよ。あとは事の次第で、教官や防衛軍兵士と対決。結果負傷はしたけど、 その場の政府はみんな死んだよ。そしてその島から3人で逃げたよ。ヘリで・・・」
 「あとの2人は?」
 辺りをきょろきょろと誠は見渡した。だが明はじっと誠を見つめていた。
 「死んだよ・・・」
 「え?」
 「脱出してから半年後に、斎藤と東条は政府に見つかって殺されたんだ・・・」
 「そんな・・・」
 「だから君に会えてよかった。忠告みたいになるが聞いて欲しいんだ。もしも誰かと脱出できたとしても、その後が問題だよ。一般的な生活は死だと思ってくれ。 いいね?」
 「・・・はい・・」
 口の中に入っていたサイコロステーキが飛び出しそうになった。いきなり来てこんな話になるとは思ってもなかった。会う人会う人に、 人生のさよならを言われているみたいだ。
 「そうだ。今ちょっと待ってて」
 明は何か思い出して、男が円になって話している所へ行くと、中から誠と同じぐらいの学生を連れてきた。メガネをかけているがなぜかかっこいい。
 「早名君、君と同期の優勝者だ。彼は君より数ヶ月前にプログラムを優勝したけど、君と年は同じと思うよ」
 目を合わせると向こうのめがねを掛けた少年は自己紹介をしてきた。
 「どうもはじめまして。俺は新藤って言うんだ。よろしく」
 「俺は早名だ。数日前の岡山での優勝者だ・・・」
 「あっ、知ってる知ってる。テレビで見たよ。俺は神戸の優勝者・・・」
 既に明はいなかった。探すと他の男と飲んでいる。新藤と名乗る男は、話すと誠と気があった。
 「俺ってどう映ってたんだ?」
 「ええ?そりゃあ立派に映ってたよ」
 「なんだよそれ」
 誠と新藤は息が合い、自分が体験した話をお互いした。かなり似ている所があり、かなり為になる情報もあった。16歳同士あって他の話も合った。 新藤は誠がなぜみんなあんなに明るいんだと訊くと「ああ、みんな無理してるんだよ。笑ってすべて忘れようとしている。そうでなきゃ何時まで経っても 優勝した意味がわからないじゃないか。俺はこう思うよ。俺は死んでいったみんなが集まった集合体だとな。そして今俺がいるのは、 笑うためだ!」と笑って言った。
 もしかしてそうなのかもしれない。単純に殺し合いが嫌とかじゃなく、すべては笑う・・・微笑む・・・その為に俺達は生きているのかもしれない。 人間に許される唯一の自由――――「笑う事」
 笑えばすべてがいいようになる。笑っていればそれで俺達は生きれる。悲しみの裏の笑いは、つまりは死んでいったクラスメイトに見せれる出来る唯一の ご褒美だから。
 笑っていれば・・・。




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