〜椎名瑞希の場合〜
善通寺第四中学校からは、200メートルぐらい離れた所にある、一軒の店の2階には、部屋はピンクに染まり、壁には大きなロックミュージシャンのポスター(グル・ベギー)
が貼ってあった。椎名瑞希(女子九番)はいつになく勉強を頑張っていた。もともと頭はよかったのだが、彼女自身あまり好きではなかった。
瑞希の家はスナックをやっていて、父親を早くに亡くし、これまで瑞希の母、椎名洋子(しいなようこ)一人で瑞希と瑞希の姉、椎名睦美(しいなむつみ)を育ててきた。
しかし父親がいない瑞希は、なんのさびしさもなかった。母親はやさしく、いつも自分達姉妹の面倒を見てくれていたからだ。しかも父の死んだ原因は、
借金を作って自殺したという、瑞希にとって父とは呼べない人間だった。そんな瑞希の父が昔ある事を言った。
「瑞希、人は強いとか、弱いとか、すべては
外見で見せるんだ。心が強くたって、行動で見せなきゃ周りの人間は分かりやしねえぞ。瑞希、女は弱い・・・そんなイメージは捨てろ、
女の中でも、周りの女が憧れるような女になるんだぞ」
しかしこれは運命なのか・・・。瑞希が中学1年の入学初日、女子の上級生5、6人に、呼び出しをくらった事があった。
その先輩達は不良とまでは行かないが、結構学校内では噂されてる悪だった。上級生達は瑞希をトイレに呼び出し、1年生リンチを始めた。
この善通寺第四中学の不良の間では、入学初日の1年生リンチは有名すぎるものだった。瑞希もはじめは我慢していたが、ついに一人の
上級生が瑞希の顔に唾をかけた時だった。プッツン瑞希の何かが切れた。それからだった、自分が一体何をしたのか覚えてなく、
気がつくとトイレの掃除用具がボロボロに散らばっていた事、そしてその下敷きに上級生全員がのびていた事。中には血を流していた人間もいた。
瑞希自身怪我は擦り傷一つで済んでいたが、手には真っ赤な血がついていた。
それが瑞希にとって始めての喧嘩であり、切れた時だった。
そこから瑞希の人生が始まった。学校内では、上級生をボコボコにしたという噂がすぐに広まっていた。そしてあっという間に瑞希は
中学1年の部で、どのクラスに行っても瑞希に逆らう奴はいなかった。逆に言えば、瑞希自身も不良といえる人間とは絡みがなく、
普通に授業を受けていた。ところがある、1年の冬だった。
いつもの様に瑞希は友達と帰っていた時だった。そのときは既に、長いものに巻かれろ状態で、瑞希の周りには何人もの女子がいた。
そう、この時から「椎名軍」は誕生していた。しかし、ある不良の女子3人が下校途中の瑞希に、突然カバンで襲い掛かった。
カバンの中には、鉄板らしいのもが入っていてものすごく痛かった。それを瑞希は後ろから後頭部にモロに喰らった。勿論倒れたが、
椎名軍である周りの女子2,3人もあとの不良女子2人にやられていた。そのとき瑞希が薄れ行く意識の中、椎名軍のメンバーであり、もっとも
仲がよかった、姫城由紀(当時1年A組十四番)は、2人の不良女子を殴り蹴りので圧倒的に勝っていた。しかし残っている、
瑞希をカバンで殴った女がいたのだ。
その数分後、凶器が持ってるほうがやはり勝った。瑞希の軍はボスがやられ、全滅という形になった。
みんな怪我もそれほど大きくはなく、大きな怪我でも3日の入院で終わった。
後日、やはり噂は大きかった。椎名瑞希を倒したという噂が、あちらこちらと出回っていた。しかし瑞希にとってその噂は、復讐できる・・・
という意味にも取れた。一番初めに出たのは、寺島留美(当時1年C組十番)という名前だった。他クラスだったが、なんとなく瑞希は知っていた。
一時期噂で寺島留美と、瑞希が対決するんじゃないかという噂を聞いたことがあったからだ。やはり、と瑞希は思った。
瑞希が聞いた話だと、帰り途中の椎名軍を襲ったのは、寺島留美を代表として、同じくC組十四番の永崎優子(ながさきゆうこ)、八番
沢木美久(さわきみく)だった。
そして椎名軍の復讐劇が始まった。寺島留美の帰りを襲うのは、外道な道と考えた瑞希は果たし状まがいの物を寺島留美に出した。
それが1年最後の月、3月だった。
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