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教育適正教師
 私はこの問題児だらけのクラスをどうやって。。。

 「ようこそ皆さん。私が今回試験を担当します島です。それでは早速試験の説明をいたします」
 黒板の前に立つ頭皮が透けてる中年太りの男は、手元の資料を見ながら淡々と説明していく。

 窓がない換気扇だけの部屋を見渡しながら、関家俊一(せきやしゅんいち)は自らの受験番号が書かれた席へ座っていた。見渡すと学校の教室と同じようなデザインをしてる部屋だ。
 自分と同じように静かに席に着いている教師はおよそ15人ほど。中には金髪くんもいる。

 3年前から始まったこの試験。
 この国の教育問題を根本的に打破する為と名づけられた試験。その名『適正教師試験』
 毎年1度だけ各都道府県別に開かれるこの試験は、全国の汚職教員を対象に行っているものである。
 対象は小学校、中学校、高等学校の教員。
 社会党が政権を握るこの国では、生徒に問題があるのはすべて教員の責任として、わいせつ、体罰、裏金問題などだけでなく、その担当クラスのまとまり具合が悪かった教師がこの試験の対象となる。

 彼が所属する高等学校は、県下でも問題児が少なく、更に生徒一人一人の成績が平均的によい。
 しかし彼はある一人の生徒によって「問題教師」のレッテルを貼られることになった。
 ある女性徒2人がグルになり、俊一が生徒にわいせつな行為をしてるような写真を撮られたことがきっかけだった。
 罠にはめられた。そう言っても
 「生徒の言葉より教師の言葉を信じろとでも言うのか!」と校長に怒鳴られる始末。
 この国では常に教師が下であり、ある意味生徒が権力を握っているのだ。
撮られた写真はなんとも無様で、興奮したように見える自分の顔がひどく不細工だった。
 写真を見せて「実はこの生徒が急に服を脱ぎ始めたから、止めようとしたら手を掴んで・・・」などと
 言っても誰一人として信用しないだろう。

 「えー、では基本的なルールからご説明します。ご存知の方が多いと思いますが、ここで
 もう一度ご説明いたします。まず――」
 まず、この『適正教師試験』はゲーム形式で行われる。記述式もあるが殆どが己の行動が回答となる。
 「その試験に合格しますと、えー、元の学校には戻るか、もしくはご自身で指定した学校へ転勤手配いたします」
 ポケットから紺色のハンカチを取り出し、薄い頭皮の部分をベビーパウダーをつけるようにぽんぽんとして汗を拭く担当の島は、咳払いをして残りの説明をした。
 「逆に総合得点が足りない不適正教員のみなさんは、教員免許永久剥奪と、加えて指名手配書を各学校の掲示板に掲載いたします」
 つまり、不合格になった教師は免許がなくなり、顔写真つきで『教師になる資格がないやつ』と張り出される。
 そうなったら終わりだ。もうその県にはいられない。家族にも世間にも恥さらしとされる社会的抹殺がまっている。

 「えー、尚、昨年度の合格者は22人受けて5名合格となっております」
 「えぇ!5人!?」
 島の説明に酷く驚いたのか、太い黒フレームのメガネをしたシチサンの中年男が声を張り上げた。
 「・・・えー、あなたは中村先生ですね。なにか問題でも?」
 その目は冷酷な何かを見下すときに人間が使うものだった。
 「あ、いえ、す、すいませんでした、なんでもないです」
 教室内の教員全員の視線が集まったのに気が付いたのか、メガネのシチサンは余計に焦った。
 「そうですか。それでは、早速第一次試験を始めたいと思います。みなさんの座ってるその机の中からモニターを出してください」
 ゴトゴトという音が教室内に響く。皆がそのモニターを出したのを確認すると、島は説明を続けた。
 「そのモニターが今回の1次試験です。その画面に試験ないようが表示されますので、タッチパネル式で答えていってください。回答は選択式になります。全部で問題は50問となっています」
 俊一は机の中から取り出した、モニターと呼ばれる両手サイズの携帯ゲーム機のようなものを見た。
 電源は入っておらず、素材はアルミのようで、銀色をしたその物体の角は丸くなっていてかわいい印象を受けた。
 「時間は30分。考える問題は一切ありません。素直に当てはまる回答をしていただければ結構です。
 えー、適正試験のようなものですが、各機械ごとに教員の皆様の個人情報が入ってますので今一度、左上に張ってある受験番号を確認してください。万が一違っていた場合は今のうちに申し出てください」

 どれどれといったように俊一は机に張ってある受験番号とモニターに張ってある受験番号を見比べた。
 どうやら間違いなさそうだ。そう思いながら俊一は島の方を見た。
 島は間違ってる人がいないか教室全体を見渡した後説明を続けた。
 「えーっと、どうやら間違いはないようなので、ただ今から試験を開始致します」
 そう言うと、島は右手に持った小さなスイッチを押した。ピピピと電子音が鳴った後、俊一の手に持つモニターに電源が入った。
 「今電源をONにしましたので、OFFのままの人はすぐ言ってください・・・えー電源が入った人から画面の指示に従って進めてください」
 その言葉を最後に、とても静かな時間が流れ始めた。皆がモニターに集中していた。
 俊一もその一人であり、緊張しながらも画面の指示に従いながら試験を行っていく。

 『ようこそ第一次試験へ』と文字がディスプレイ表示された後、日の丸が画面いっぱいに映り、上部から『第一問』と書かれたものが下がってきた。
 『私は汚いブタであると同時に、立派な教師である』
 なんだこれ?俊一は眉を歪めた。同時に下部から登場した4つの回答が目に入った。
 『1、はいその通りです』
 『2、いいえ違います』
 『3、とにかくブタである』
 『4、どうせ子供たちは私を立派とは思っていない』
 更に眉が歪み始めた。頭の中はクエスチョンでいっぱいだ。
 ふざけているのだろうか?しかしコレに答えるのが試験なのだから仕方ないのだろう。
 俊一は1をタッチした。
 同時に『第二問』と画面が切り替わった。
 「!?」
 俊一の目に映ったのは文字でなく写真だった。
 画面いっぱいの写真に一瞬驚いたが、一番驚いたのは学生服を着たおじさんだった。
 校舎裏のような所で、学生服を着たおじさん4人が1人のスーツ姿のおじさんを蹴っているものだった。
 イジメ。その3文字が頭をよぎった瞬間、問題がフェードインしてきた。
 『この写真を見て、イジメだと思うか答えなさい』
 選択肢は4つ。また回答がふざけたものだった。
 『1、絶対いじめだ』
 『2、大人同士なのでいじめではない、試練』
 『3、見ていて死にたくなった』
 『4、生徒による教師への報復』
 こんな変な問題は人生の中で1度となく解いたことはない。俊一は疑問でいっぱいの頭を振り払い、
 『1』を押した。

つづく
福田
2007年11月09日(金) 00時12分25秒 公開
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