第3ゲーム
こんにちはMASKです。もう大体の話の内容は掴めたと思います。(この小説)
ふとこういった小説を書いてると思うことがいくつかありました。なぜ、こんなものを書いているのだろうか。なぜ、
こんなにも書きたいと思うのだろうか、と。それはすべてバトルロワイアルを読んだからだと思います。原作を読んで、初めて小説嫌いの僕が
大絶賛して、それ以来自分もこういった小説書きたいと思って書いたのが始まりです。
やはり時が過ぎるのは早いです。何時からこれを書き始めて、いつ頃書き終えたのか全く覚えていません。(笑)それは自分が夢中になって
いるからだと思います。
その時であった。危険な女は焦ったような口調で黒い男に叫んだ。
「このゲームを辞退する事はできないの?」
「・・・・」
その場の全員が黒い男の声を待った。即答ではなかったが、やはり質問の答えが返ってきた。
「・・・いえ、辞退するのとは少し違うかも知れませんが、このゲームからやめる事はできます」
黒の男が言うと、一見誰が見ても壁。その壁のところから、何故か機械音がしてきた。興味を示したように
参加者一同はその壁に見入っている。そして壁の真ん中から切り目が出てきた。何が起こるのかと不安な気持ちを抱いていると、その予感は当たった。
「ごおおおおおおお」
切り目からは一つ隠し扉が現れ、扉は頑丈な大理石。しかも透明だ。それぐらいでは驚かないが、その部屋の中にあるものに参加者は驚いた。
ごおごおと燃える部屋は、部屋ではなく、ただ赤く揺らめく炎が部屋いっぱいに広がっているだけだった。
やっと何かわかりかけてきた。何をしたいのかではなく、この一億円争奪ゲームの趣旨が分かりかけていた。
その部屋は、まさに火葬場だった。
冷たくまるで人間を葬るためだけにある部屋は、今にも炎がこっちに向かって、来い、と言ってるようだ。
真ん中には火葬場そのままの、銀色の丁度人間が寝れる台がある。
とても冷酷で残酷。この世の生きるものすべてを焼き尽くす炎だ。と、黒い男の声が割り込んできた。
「みなさんの目の前に現れたのは、このゲームをやめることが出来る部屋です。部屋の中にあるのもは皆さん数々違って
見えると思います。普通に拳銃が置いてあるのや、炎がめらめらと燃えている。そんなみなさん違って見えるかもしれませんが、
どれも間違っていません。ゲームをやめる事ができる部屋は、実際に皆様の思う最終の死が、そのままビジョンに映し出されただけなのです。
さあ、やめたい人はどうぞ中にお入りください」
どういう事だ?皆炎に見えるのではないのか?赤キャップの青年は独りでに「なんてでかいトラックがあるんだ・・・」
と呟いている。何度も目を擦って見たけれども、やはり僕に見えるのは火葬場に燃える炎だ。僕は隣の大橋に聞いてみた。
「大橋さん。あの部屋に何があるの?」
「え?」
「僕に見えるのは物凄い炎だ」
しかし大橋はなにか不思議なものを見るように部屋の中を覗いていた。一体大橋には何が見えているのだろう。
「穴・・・」
「なんだって?」
「黒い穴が見えるの・・・。真っ暗で、底が見えない穴・・・」
大橋には真っ暗な穴が見えるのか・・・。とすれば・・・。いや。これまでの僕の予想が当たっていれば、
あの部屋の中に見えるものは、黒い男が言ったように、最終の死、つまり僕ら参加者一人一人の未来が見えるのか。
とすれば僕は炎って事は・・・火葬。つまりは火葬場でその命を絶つと言うのか?冗談じゃない。火葬場まで生きていたなんて
馬鹿な話があるだろうか?
しかしよく見ると炎の中に一台の車が見えた。さっきまで全く見えなかったのに何故だ?乗用車?車は炎に包まれて分からないが、
とにかく僕は車で死んで、最終的には火葬で焼かれる・・・と言う事なのだろうか。
そうすれば赤キャップの青年が見たトラックというのは、トラックに撥ねられる・・・もしくは乗っていた車で衝突。まさか。
じゃあ大橋の場合はなんだ?黒い穴?穴・・・。底がない。水か?水死?いや・・・きっと自殺か。どこか高いビルか
どこかの屋上から飛び降り自殺。どこでそんなことになるんだ?これからも大橋の人生で、自殺に追い込むことがあるって言うのか?
何故自分が大橋のことを心配したのか分からなかった。今はそんな事より、参加者全員が同じ光景が目の前に見えるのではなく、
一人一人の死に方が見えるというのが不思議だった。
************
僕は克也の見たものを聞こうと思ったが、まるで人が変わったように克也はひょろひょろと弱くなっている。
放心状態の上、小さな子供のように眉毛を歪めて小刻みに体が揺れている。あれが、あれが克也なのかと思うぐらい。
やはり参加者の中でその部屋に入るものはいなかった。
第三ゲームとは一体どういったものだろう。また一人死ぬのか・・・。
「それではみなさん、第三ゲーム開始と行きましょう。まずこのゲームではみなさまで争っていただくのではなく、
ある物から逃げてください。いいですか?」
黒い男がそう言うと、また壁だったところが開き、今度は長い通路が出現した。まるで洞窟のようで、薄暗い。
「目の前にあるのは第三ゲームのゲーム会場です。皆様はあそこで制限時間内に出口となるところにたどり着いてください。
尚、その中で様々なアイテムがありますので見つけ次第自分の物にして結構。通路にはある物が追ってきます。その追跡者から
逃げてください。倒せるならば殺して結構。それでは協力するなりどうぞ」
壁の向こうに現れた通路に、言われるがままに僕達は歩いて行った。一番に先頭を切ったのはやはりウエスタン風の男だ。
腹の激痛は病んでいるが、顔に流れる汗は発熱を起こしたように見える。
走るように一人で通路を走って行ったウエスタン風の男は、あっという間に僕達には見えないところまで行った。
「さあさあどうしようかな」
そう口走ったのは赤キャップの青年だ。かぶってるキャップを手で直しながら、ウエスタン風の男どおり、一人で通路に渡って行った。
残った僕達はとりあえず歩いて通路に入った。中は丁度人二人ぐらいの横幅で、先が暗くて良く見えない。高機能で僕達が歩くたびに、
その足を踏んだ通路一メートル範囲で電気が自動でつくように出来てる。
「ががががが」
何の音かと皆が後ろを振り返ると、開いた壁が閉まっていく。完全に閉まり、入り口から逃げる事なんて出来ない。後は前に進むだけになってしまった。
「よし、ここは一度みんなで協力して出口を探そう」
スキンヘッドの男が残りの参加者に必死に説得している時だった。「ごごごごご」とまた入り口だった壁が開いた。何かのミスか?と思ったがそれは違った。
「な、なんだあれ!」
青い学ランの少年が叫んだと同時に僕達は目の錯覚と思えるほどのものを見た。
それは一度僕が第一ゲーム時に来た階段から出てきた。002と書かれたプレートの部屋から出てきたのは、
銀色の全身鎧を身にまとったものだった。顔も、全部肌をさらけ出している所はなく、頭の兜には赤々と
垂らしている毛が束ねて飛び出している。それ以前に驚いたのは、左には大きな盾と右にはフェンシングのような剣を持っている。
「逃げた方がよさそうだな・・・」
そっと独り言のように呟いたのはスポーツ刈りの男だった。細い目からはなにか鋭いものを感じる。
「わ、わあああ」その言葉で青い学ランの少年が一目散に逃げ出した。それを追いかけるようにスキンヘッドの男が追う。
「おい、待て!一人は危険だ」
とにかく前に進むしかないようだ。鎧姿の兵士を見入るように僕らは後ずさりをした。が、その時誰かが僕の横から瞬間的に飛び出した人間がいた。
「大橋!」
大橋は誰かに後ろから蹴られたらしく、ますます鎧兵との距離が縮まり、鎧兵は獲物を確認するようにがしゃがしゃ音を立てて近づいてくる。
だれが大橋を押したんだ!それはすぐに分かった。
後ろをなんども振り返りながら危険な女が逃げていく。始めてあった時とは別人のように強張った顔をして逃げていく。ちくしょう。
僕は一人だけ大広間に出た大橋に駆け寄り、手を差し伸べた。
「走るんだ!」
大橋の返事も確認せず、スポーツ刈りの男と克也にも同じ言葉をかけて、何とか逃げるようにして通路を走った。
鎧兵はそんなに早くなく、走るこっち側とでは比べ物にならないぐらい遅い。大橋の手を強引とも言えるように
引っ張って走っていくが、あるものが追いかけてくる音がした。
鎧兵!一瞬後ろを振り返ったそのときに見た光景は、やはり鎧兵が僕達を追いかけて来ていた。
さっきよりも断然速い。僕達と同じスピードで追いかけてくる。
必死で逃げるが、がしゃがしゃと言う鉄が触れ合う音は止まず僕達の耳に入ってくる。
先を進むに連れ、二手に分かれている道に出た。通路と言うよりも既に洞窟だ。地面は土で、壁は岩石。
どちらの道に行こうか迷った。あまり時間は取れないが、咄嗟に右を選んで進んだ。
僕と大橋を先頭に、後ろでは克也とスポーツ刈りの男がついて来ている。とにかく今はあの鎧兵から逃げなくては。
足が進む度に通路がどんどん狭くなってる事に気がついた。自分よりまず大橋を先に行かせ、そのあとから僕と克也、
スポーツ刈りの男が走っていた。
「稲葉君!行き止まりよ」
丁度息が切れそうになった時、大橋の叫ぶ声が聞こえ、僕は目の前をはっきりと見た。
「ごごごごごごご」
またも何かの仕掛けだ。大橋は壁に向かって何か触っている。壁?まさか。行き止まりって事か?そんな。
変異な音を立てて大橋がいる所と、僕と克也、それにスポーツ刈りの男が丁度いる境目に大きな鉄格子が下りてきた。
やばい。このままじゃ大橋を一人にしてしまうし、僕達は鎧兵に捕まってしまう。
しかしそれも時既に遅し、大橋と僕は分厚い鉄の壁によって姿をお互い隠すようになった。
「大橋!大丈夫か?」
「ごごごごごご」
次なる仕掛けが実行されようとした時に、鉄格子の向こうにいる大橋が何か喋ったようだ。
「動いてる!ここが動いてるよ」
よく聞き取れなかったが動いているというのはなんとなく聞こえた。動く?一体何のことだ。
途端に変異な音と大橋の声は聞こえなくなり、どこか遠くへ行った様な感じだった。
「おい、こっちに来るぞ!」
克也は脅えながらも僕の方を何回も叩いて叫んだ。
「・・・・体当たりしかない」
立ち向かうと言うのか?僕はスポーツ刈りの男の言葉に戸惑った。いくらあの銀色の鎧が重たそうでも、
あの剣に掠れでもしたら大変な事になる。しかしここは運に任せるしかない。それしか手段がないのだったら。
「やってみましょう」
安易に僕はスポーツ刈りの男に答えた。目の前には走ってくる鎧兵がいる。距離にすれば凡そ五メートル。
「行くぞ!」
スポーツ刈りの男の掛け声で僕は走った。いや走ったというより突撃と言った方があっている。
僕はスポーツ刈りの男よりあとに突撃したので、既に鎧兵が崩れ落ちる所に僕のアタックがきて、崩れ落ちる鎧塀の各部分の鎧が飛んだ。
飛んだ?おかしい・・・。なぜ飛ぶんだ?中に入ってる物体はどうなってるんだ?鎧がバラバラになるって事は・・・。
僕は目の前の光景に驚いていた。数メートルにわたり飛び散った鎧は、中身がなかったのだ。足の部分や胴体の部分。
それらがお互い違う場所に飛んでいる。中身はどうしたと疑問を抱いた時、スポーツ刈りの男はそのバラバラになった鎧を見て冷静な言葉を口走った。
「やはり・・・中身は空か」
「ど、どういう事ですか?」
「私にもどうにも分からないが、追って来るときに何かスカスカしている物をこの鎧兵から感じたんだ。
まるで何処からか糸で操られているようにね・・・」
操られている・・・。僕の頭の中に黒い男が浮かんだ。姿形はわからないが、
とにかく黒の男と言う存在。とりあえずこれで鎧兵はいなくなった。
そうだ。大橋。大橋のことを忘れていた。後ろにはやはりまだ鉄格子があり、そこにもたれるように腰を抜かしているのは克也だった。
「とりあえず、これで少しは安心できた・・・」
僕は一度鉄の壁に向かって大橋を呼んだが、大橋からの返事はなかった。それを不思議そうにスポーツ刈りの男は見ていたので
鉄の壁に向かって指を指して答えた。
「一人あの鉄の壁の向こうにいるんです」
スポーツ刈りの男は驚いた表情をした。半ば良く見ると三十を超えている。若く見える中年男だ。
とてもやさしそうな目をしていてどこか僕には安心感が持てた。
「そう言えばなぜここに鉄格子が突然現れたんだろう」
「僕が目の前を見たときはこの先は壁で行き止まりでした」
「行き止まり・・・」
考えるようにして眉を歪めた中年男は鉄の壁に近づくと、黒くさび付いた所を何度も触って答えた。
「向こうにいる子の名前は?」
「え?あ、大橋です」
「私の直感だけど・・・、大橋って子は既にこの先にはいないと思うよ」
「え?どういう事ですか?」
「ここにはたくさんの仕掛けがあることに君も気がついてるよね?」
「あ、はい」
「呼んで返事がしないのだったら、きっと向こうにいる大橋って子は、違う場所に移動させられたんじゃないかな」
「ど、どうやってですか?」
「いやそこら辺は私にも分からないんだ」
まるで黒い男がその会話を聞いていたように、突然鉄の壁が動いて、大橋がいるはずの行き止まりの壁が見えた。
動いた・・・と同時にいない。たしかに先ほど大橋は目の前の行き止まりの所で鉄の壁で大橋の姿は見えなくなった。
その数分で大橋がいなくなった。中年男の言った通りだ。
「いない・・・」
「やっぱりな・・・」
「え?」
克也はいきなり動いた鉄の壁に驚きつつも一体何が起こったのかさっぱり分からない顔をしている。
「とにかく・・・その大橋って子を探すんだろう?」
「え?いや・・・まあ」
中年男はその細い目からはすべてを見透かしているようだ。それでもっていきなり手を差し伸べてきた。
「私は明彦。よろしく・・・、えっと」
「あ、僕は稲葉です。稲葉修一です」
なぜこんな所で自己紹介なんだろうと思いつつも僕は明彦と名乗る男の手を取って握手をした。
「よろしく修一君」
「・・・君の名前は?」
明彦は少し落ち着きを取り戻した克也に手を差し伸べた。克也はなにか思い出した様に立ち上がり、明彦と握手しながら答えた。
「俺の名前は克也です」
「よろしく克也君」
とりあえずお互いの自己紹介は済んだ。そして今は大橋を探す事が先決だ。僕は大橋一人がいた行き止まりの所に足を踏み入れた。
・・・・。なにも起こらない。やはり誰かが安易に監視していて動かしていたのか?
「なにも起こらないな・・・。とりあえず、二手に分かれてた道に戻ってみようか」
「はい」
明彦は足で散らばった鎧を隅に退かせ、先頭をきって進んでいく。キョロキョロしながら克也はそのあとについて行く。
僕もまだここに残っていたい気持ちを抑え、克也の後ろについて行く。
何処からかピチャピチャと水滴が落ちる音がする。とても不気味な音だ。肩から足元に渡り異様な寒気がする。
「なんだ?」
先頭を進む明彦は驚いた声を張り上げた。
「どうしたんですか?」
「いや・・・・。さっきと道が違う・・・」
「道が違う?そんなはずはないでしょう」
実際後ろにいる僕は先頭の道がどうなっているのか分からない。まだ歩いて数メートルしか歩いていない。
後ろを振り向けば鎧兵の鎧が散らばっているはず。
「・・・・え?」
僕は振り返った後ろの光景に唖然とした。ない。鎧がない。それ以前に道が変っている。
「どうしたんだ?修一君」
異変に気がついた克也も後ろを振り返り驚き、勿論明彦も振り向いて驚いていた。僕の目の前にあるはずの道は、
以前見たことある二手の道があった。
「どういうことだ・・・」
「迷宮だ・・・。いや迷宮とかではない。実際この通路は動いている。
まるでルービックキューブのように小さく小さく道を動かされている・・・」
思い浮かべたルービックキューブはカラフルで僕にとってはあまり楽しい物ではなかった。
あんな四角い物を動かして同じ色を揃える事に楽しさは感じない。
「ちくしょう、どうしたらここから出られるんだ」
克也は頭を掻き毟り叫んだ。僕が肩を揺すって説得をしたが、ちくしょうと言う言葉は止まない。
「待てよ・・・。まだ考えがもう一つだけある・・・」
「もう一つ?」
「ああ。さっき私はルービックキューブの様になってるといったが、もしかしたらそうではないかもしれない。本当に動いていない・・・」
「まさか・・・・」
「そう、もう一つ考えられる事は、私達が間違ってると言う事だ」
何かしらすぐに分かった事に僕は何処からか熱意が溢れ出した。今いる状況から抜け出せるなら抜け出したいが、謎を解いた時の感じは堪らない。
「もしかして・・・あの時の食事・・・」
「私達が同じ事をしたと言えば、階段を上がり下りした事と、
食事をした事だ。きっと食事をしたときに何か薬物が入っていて、私達の脳を混乱させている。
老化で見られるボケと同じ症状だ。これがもし本当だとすると、私達が考えても無駄な事だ」
「仮に動かないでいたらどうでしょうか?」
「それもいい考えだと思うが、今は大橋って子を助けたいのだろう?修一君」
そうだ、早く大橋の所に行かなきゃ、彼女一人では何かとあぶない。
「とりあえずは歩こう。さっき言った二つの考えの内に、どちらがあってるか分からないし、
どちらも違っているかもしれない。しかし今は道を進む他解決方法はないだろう」
「そうですね・・・克也、いいか?」
「あ?ああ」
とりあえず進む。それは正論かもしれない。
先に進むにつれ、大橋の心配が大きく頭いっぱいに広がり、
僕にまたも不思議な現象が起こった。やはりあの時の食事の中になにか混入されていたのだろうか。
「あれ?」
不思議で仕方がない。なにが起こったと言うよりもまず目の前の状況が把握できない。おかしいが不思議。
僕の目の前にいた克也、それに明彦はいなかった。先ほどというより五秒前までは目の前にはいたはずなのに。
一体五秒の間になにがあったんだ。五秒で二人ともいなくなった。これが仕掛けではなったら、やっぱり僕や参加者
の頭がおかしくなってる。どこかで分かれ道があって、僕はみんなが歩く方向とは逆に歩いていた。
そして目の前には僕自身が作った克也と明彦がいた。それが今になって気づいたと言うわけか。
何て事だ。あの食べ物さえ食べなければ・・・。どうすればいいんだ、これから・・・。
「ごごごごごご」
またもあの何かが動く音が聞こえてきた。驚いて周りを見渡すが岩石しか見えない。あとは暗い暗い先があるだけ。なにが起こってるんだ。
音はすぐに止み、静かになった。僕はとにかく足を進めた。前に、前に・・・。
既に視界が麻痺していて暗いところも何があるのか分かった。なにが分かったとは言え、すべて岩石以外なにもないのだが。
しかしその岩石以外のものが目の前に現れた。僕は急いで近づきそれがなんなのか確かめた。
「あ!」
目の前にはあの一番乗りでこの通路を走って行ったウエスタン風の男がぐったりして倒れている。
暗いからなにがあって倒れているのか分からない。もう少し近づいてみた。
倒れているウエスタン風の男の手には、小さな透明のビンがあった。もしかしてこれがあの免疫なのか?
そう思ったときに、後ろから大きなハンカチが僕の口と鼻にかぶさった。
力強く、そして誰かに引っ張られている。息が出来ない。くそっ、誰だ。僕は必死にもがいたがびくともしない。
もう息が持たない・・・その時に、口と鼻を押えていたハンカチと、引っ張っていた力が離れた。
不意をやられた僕は咄嗟に後ろを振り向いた。そこには薄暗い光が逆に不気味に映し出していた。
あのスキンヘッドの男がこっちを見ている。身長が一九〇近くある背はプロレスラーと今から対決するようだ。
「なにするんだ!」
僕が抵抗する目をした時に、スキンヘッドの男の背後から聞き覚えのある女性の声がした。
「稲葉君!」
「・・・!」
スキンヘッドの男が体を避けると、心配そうな顔で大橋が立っていた。
「大橋!大丈夫だったのか?」
「うん・・・まあ」
大橋は無事のようだが、なぜこのスキンヘッドの男と一緒にいるのか不思議だ。
どこかのヤクザのような顔をしたスキンヘッドの男は、ずっと僕を見ている。
「大橋、なんでここにいるんだ?この人は?」
「誤解しないで、この人は稲葉君を助けてくれたのよ。私もその一人なの。
あの時一人閉じ込められたと思ったら、いきなり地面が上に動き出して、それで気がついたら南桐さんに助けられてたの」
「南桐?誰の事?」
僕の質問に今度は大橋ではなくスキンヘッドの男が答えた。
「俺が南桐だ。南桐豪。君は?」
「は?あ・・・僕は稲葉ですけど・・・」
またもなんで自己紹介なんてしなくちゃならないのだろう。なんでも自己紹介から入ればいいってもんじゃないと思うが。
「南桐さんって言いましたよね。なんでさっき僕を・・・。そうだ、ウエスタン風の人が倒れていたんです。助けなければ・・・」
なにか忘れていると思ったらウエスタン風の男の人の事をてっきり忘れていた。とにかく急いで向かおうととしたが、
肩にずっしり思いものを感じた。見たらそれは手で、南桐が肩を掴んでいた。
「なんですか?」
「今行けば死ぬぞ」
「は?どう言う事ですか?」
「まず言っとくが、あのウエスタン風の男・・・いや、橋川龍一は既に死んでるぞ」
その言葉に僕は固まった。死という光景はあまり好まない。一旦冷静になってまた推理まがいの事を考えた。と、大橋がすべての事を言った。
「稲葉君、あの人は菌に感染されてるの。ここに来る前に黒い男が言った菌ではない・・・」
そこで南桐が手を上げて、大橋に小さく俺が言うと言った。実際大橋と南桐が並ぶと凄い身長差ができる。
「稲葉君、事情を説明するとあいつは免疫を探してこの通路に来た。私もばったり橋川に会ったが、
橋川は協力と言うものを知らない奴で、真っ先に目の前に現れた免疫に走っていった。それは本当の免疫だった。
しかしその免疫が入ったビンを開ける前に、苦しみだして、突然橋川がその場に倒れた。そこで俺は考えた。それで一つの考えが生まれた」
「考え?」
「実際よく確認はしていないが、見えるところまで近づくと、橋川は血を大量に吐いて、
鬼のような顔をして死んでいる。所々目や鼻からも血を流していた。菌に感染して死んだとこの時俺は直感した」
「え?だから免疫を取って何で死ぬんですか?」
「言っておくが死んだ理由の菌は、食事に混じっていたM―3ではない。他の菌だ」
「まだ菌が入っていたんですか?」
なぜか僕は南桐の話に引き込まれていた。まるで推理する側と、それを分かろうとする刑事だ。
「いいや、あの食事には菌はM―3しか入っていないだろう。実際に菌に感染したのはあの橋川だけだろう。しかもすぐに感染して死んだ」
「すぐに感染して・・・。まさか!」
「そう、あの免疫が入ってるビンの外側に大量に即効性のある菌、フィロウイルスの一種だと思う。それがついていたと考えられる。
しかもあんなに即効性があるのはあまり見ない。きっと黒の男が作ったものか、密輸入して手に入れた新種の菌だ」
「それじゃあ僕は・・・」
それを思うと体中に寒気がした。もしも南桐に止められていなかったら、
普通に近づいていて死んでいたかもしれない。それにこの南桐と言う人物はなぜこんなに薬に詳しいか分からなかった。
「まああくまで俺のよそうだが。他にもまあほんとに偶然でM―3によって死んだかだ」
とにかく南桐に助けられた。大橋もそれで助けられたのだろうと分かり、僕は大橋をじっと見た。大橋は後ろを不安そうに見ている。
「先ほどは助けてもらってすいません。南桐さん」
「いやいいんだ。あくまでも俺の予想での行動だから・・・。とにかくここから離れよう」
「なにか出口を見つけるいい案があるんですか?」
「いや・・・ない」
俯いた南桐は少しだけ小さく見えた。でも大きい。
「この通路はおかしいですよ。僕もさっきまで二人の人と行動していましたが不可解な事ばかりが起こります」
「それは私も体験した」
「行動を共にしていた人によると、あの食事に菌以外になにか薬物が入っていて、
今それが効いてきていて僕達は知らず知らずの内に自分の意思とは別の方向に進んでいる・・・と言ってました」
「ああ、それは俺も思ったが、他にこの通路が監視されていて、安易に仕掛けがある。
それに俺達はまんまと掛かっいる。と言う事も考えられるが・・・」
そのことは知っている。しかし最後の"が"と言うのが気になる。
「そうかもしれないが・・・。俺が本当にそうじゃないかなと思うのは、
この通路から頭を混乱させるガスが酸素と混じり出てると思う。それを吸っているから俺達は考えとは別の行動を自然に取っているのかもしれない」
「そうか・・・」
たくさんの考えがあり、どれが本当なのか混乱した。どれも当てはまり、どれも違うかもしれない。
「それじゃあどうすれば・・・」
大橋が南桐に不安そうな声で問い掛ける。困った顔もまた可愛い。
「うん。先に進むしか他無いが、あることを考えながらやってみよう」
「ある考え?」
「俺達の考えとは別・・・つまり逆だとしたら、行きたい方向とは逆の方向に行きたいと考えるんだ」
「なるほど・・・」
本当にうまくいくのだろうかと言う事もあったが、とにかく進むしか他ならない。ここで立ち止まっていてはどうにもならない。
「それじゃあいいね。逆の方向を考えるんだ」
「はい」
「はい」
「まずはこの先を右に曲がる・・・」
先頭をきって歩き出す南桐はすいすい進んでいく。大橋を僕と南桐の間に挟むようにして列を作り、
逆の方向・・・。左を曲がる事を考えて歩いた。他の事を考えてはいけない。とにかく今は左を曲がる事だけを考えよう。
左、左・・・左・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
考えの通り右に行かないで左に進んだ。目の前には南桐と大橋の姿がある。このままうまくいけば出口に辿りつけるはずだ。
「はっ」
突然頭の中で何かが揺らめいた。酷い頭痛がしたが、目は見開いていた。
だがしかし、やはりおかしかった。左に曲がった途端に、目の前で歩く大橋の姿が遠ざかっていくのだ。
どういう事だ。幾ら走っても追いつけない。確かに自分は走っている。ちゃんと走る足音が聞こえ、
息も切れてくる。だが何故だ。目の前の大橋は歩いてるじゃにか?
「おい!大橋、待ってくれ」
つい大橋に叫んでしまった。振り向いてくれ・・・もう離れたくない・・・・。
後ろから大橋を呼び止めた。それになあにと訊くように後ろを振り向いてくれた。
「なあ、おかしいんだ。君に追いつけない・・・そこで待っててくれ」
しかし大橋には追いつけない。いくら大橋が立ち止まっていても僕と大橋の差はなぜがどんどん離れていくだけだった。
「え?稲葉君?あれ?」
それにまたおかしな事が起こっているらしい。大橋が後ろを振り向いてキョロキョロしている。僕はここだと幾ら叫んでも聞こえないふりをしている。
いや待てよ。まさか本当に自分の事が見えないんじゃないか?まさか・・・。だって僕は目の前にいるんだ。それなのに何故。
「どうした?大橋さん」
「・・・稲葉君がいないんです。さっき何か声がした気がして振り向いたら・・・」
南桐も大橋の異変に気がついたらしく後ろを振り向いていた。「もしかして本当に右に曲がったのか?」と、
やはり南桐も目の前にいる自分には気がつかない。本当に僕の姿が見えないのだろうか?
だがその考えもすぐに消えた。というよりも消された。
僕は物凄いスピードで大橋から離れていった。自分の意思とは逆に見る見る内に南桐と
大橋の姿が小さくなっていく。まるで自分が逆行ジェットコースターに乗っているようだ。もしくは大橋と南桐が。
物凄いスピードで辺りの景色が線に見えてきた。一体このまま何処に行くのだろうか。こんな早いスピードだったら既に壁にぶつかって
いてもいい頃なのに。
************
南桐、大橋から逸れて、数分の無が続いた。
どこか真っ暗で怖い場所に自分の体は止まっていたが、
なぜか体が動かない。この真っ暗な所から抜け出したかった。
お化け屋敷のように真っ暗で右も左も分からない。目の存在理由がないのが事実だ。
五感の一つでも欠ければ不自由だというが、それは時と場合によると思った。
暗い。
怖い。
そしてやがて一つの光が見えてきた。
体は動き、前に前にと進むごとに蝋燭で照らされている通路が見えた。一歩一歩の範囲で蝋燭が一本一本置かれている。
そこは先ほど彷徨っていた通路とは少し違った、なんだか不気味な通路だった。幅は先ほどと対して変らず、妙に道が曲がっている。
ヘビの腹の中で彷徨っているようにも錯覚した。
少し残る頭痛と、力がほとんど出ない体を無理やり引きずりながら歩いていく。
歩いていくと、茶色の扉が僕の右手に見えた。その扉はすぐ先にももう一つあった。入ろうかどうしようか迷ったが、
やはりこのまま通路を歩く事にした。
静かな通路に自分の歩く足音だけが聞こえる。どんどんと進むと、先ほどと同じ形、色の扉がいくつもあった。
いかにも入れと言わんばかりに綺麗に同じ扉が並んでいる。
警戒しながら僕は側にある茶色の扉のノブに手を置いた。
途端に後ろの通路から「ごおおおおお」と機械のような音で、誰かの断末魔のような叫びにも聞こえる音がした。
歩いて来た通路を横目で見ながら僕はノブを手で回し開けた。
「ガチャ」と簡単に扉は開いた。半分顔を覗かせて部屋の中を見たが、
これといって危険なものはない。見た限り古い倉庫のようだ。一度どこかで見た西部風だ。
体を乗り出して部屋の中にに入った。中は藁と樽がある。古錆びれた棚には幾つものホコリ被った厚い本が置かれている。一体ここはなんだろう。
ふと明らかに新しいものを見つけた。それは冷蔵庫だ。古臭い物の中に混じって、
1mぐらいの高さの冷蔵庫が置いてあった。どう見てもホコリが被ってなくぴかぴかの新品のようだ。
すぐに冷蔵庫に駆け寄り、まずは上の冷凍庫から開けたが何も入っていない。しかし電気が流れていて、冷気が一斉に僕の顔を包んだ。
次に下の冷蔵庫を開けてみた。・・・・・。一瞬何もないような感じだったが、よく見るとぽつんと一切れのチーズ、ロールパンが置かれていた。
「ぎゅるるるる」
見ていると腹の虫がなった。もしここで毒が入っていたら確実に死ぬだろう。しかしお腹が妙に空いてくる。
思った時には行動していた。冷蔵庫にあったロールパンを手で掴み、ぱくっと口に放り込んだ。味は普通で
これと言って美味しいわけでもないしまずいわけでもない。
ごくっと口の中で噛み砕かれたのを飲み込むと、次に一切れのチーズにも手を伸ばしていた。
チーズは綺麗な色をしており、そのままチーズも口に放り込んだ。むしゃむしゃと口の中で噛み砕くがこれも普通の大好きなチーズの味に食感だ。
ごくんと飲み込もうとしたときに、口の中に何かが残っているのに気がついた。一度噛み砕いたチーズは既に喉を通っていく。
だがまだ口の中に残っている物がある。思わず口から出してみたが、驚いた事に飲み込んだはずのチーズが食べる前のままあった。
「おかしいなぁ」
もう一度そのチーズを口の中へ放り込んだ。むしゃむしゃとまた先ほどと同じ行動をした。そしてゴクンと飲み込んだ。
しかし・・・また口の中に残っている物があった。まさかと思い口から出して見たが、やっぱりさっき食べたチーズだ。
「おかしいなぁ」
更にもう一度そのチーズを口の中へ放り込んだ。むしゃむしゃとまた先ほどと同じ行動をした。そしてゴクンと飲み込んだ。
しかし・・・また口の中に残っている物があった。まさかと思い口から出して見たが、やっぱりさっき食べたチーズだ。
「おかしいなぁ」
また更にもう一度そのチーズを口の中へ放り込んだ。むしゃむしゃとまた先ほどと同じ行動をした。そしてゴクンと飲み込んだ。
しかし・・・また口の中に残っている物があった。まさかと思い口から出して見たが、やっぱりさっき食べたチーズだ。
・・・・・・?
さっきから同じ行動を繰り返しているように思える。確かにそうだ。同じチーズを何ども何ども食べる行動を繰り返している。
デジャヴのようでそうではない。これは幻覚か、それとも現実か?
飲み込んだ瞬間にチーズが現れる。食べても食べても出てくる。既にお腹の虫の鳴き声は止み、逆にもう食べれないという声を上げていた。
僕はチーズを噛み砕き飲み込んだ。だがやはりチーズは口の中にある。食べた食感もある。だがもう腹がいっぱいで食べれない。
仕方なく僕は口からチーズをそのまま吹き捨てた。
ぼてっとチーズは地面に落ちた。これで口の中には何も残らない。最初からこうすれば良かったんだ。しかしなぜにも不思議な事が起こるんだ・・・。
考え込みながら僕は腹いっぱいのお腹を摩りながらその部屋を出た。だが予想は少ししていたがまさか本当になるとは思わなかった。
「どこだ・・・・」
部屋から通路に出たのだが、そこは先ほどの通路ではなく、また別の違う所にいた。
階段が目の前にあり、後ろは壁だ。両端にはあるはずの茶色の扉さえも消えている。そう、
目の前にある階段を上れと言う事だ。なるほど気がついていなかっただけで、出口の答えは最初からあったんだ。
初めの時から次から次に出てくる不可解な事に従っていればすぐに出口にたどり着けたんだ。考えてはいけない。
僕はすぐに階段を上った。するとそこにはまた茶色の扉があった。
無意識でその扉を開けて入った。
「やっぱり」
入ったところは大広間に出た。凡そ三十畳か。先ほどの大広間とはまた別の所だ。なにか妙に明るくアロマの香りが薄っすらと香り立つ。
先ほどの扉が本当に出口だったのかは視界にいる赤キャップ帽の青年を見て分かった。赤キャップの
青年はテーブルに肘掛けてこっちを見ている。口をくちゃくちゃ動かしている事からガムを噛んでいるらしい。
「よお、お前は2番だ。残念だったな、おれが1番だ」
赤キャップの青年は勝ち誇った言葉を僕に浴びせた。それがどうしたと思った。腹はたたなかったがよくクラスに一人はいるなと思った。
本当にここでよかったのか半分疑いながら周りを見渡した。天井も高く、そしてやはり周りの壁には扉がある。
ここから参加者が出てくるのだろうか。と言う事はここでいいのか。僕はキョロキョロしながら赤キャップの青年とは少し離れた所に座った。
その間南桐と大橋のことが心配になったが、それ以前に死んでいると南桐が言ったあの免疫を持って倒れている橋川が気になった。
本当に死んだのか。まだ生きているかもしれない。そう言ったものが僕の頭の中で渦巻いていた。結果僕に腹痛が起こることはなかった。
************
赤いキャップ帽の青年は数分すると僕に話し掛けてきた。一見自分より年上のようにも思えるが何か子供っぽい所が残っている。
「なあお前名前なんて言うんだ?」
「・・・稲葉修一だけど」
自分でも分からなかったがタメ口で話す事に戸惑いはなかった。
「ふうん・・・。稲葉か。いい名前だな。俺は鷹野正治だ。よろしくな」
「・・・ああ」
なにか気に入らない。人生の中で赤キャップ・・・いや、鷹野のような人間とは何度も会ったことがあるのだがなぜだか気に入らない。
「ガム・・・食うか?」
鷹野は胸ポケットから一枚のチューイングガムを取り出すと僕に言った。欲しくないし、貰う気もしない。
「いや、いい」
「ふうん」
一向に僕達のほかに誰も現れない。見忘れていたが、テーブルには一席ごとにティーカップが置かれていた。中身はコーヒーのようだ。香りが強い。
「・・・おい稲葉。お前もやっぱり一億円欲しくてこのゲームに参加したんだろ?」
そうだ。忘れていた。このゲームは一億円争奪ゲームだった。いまさら逃げれないこの場所でいや違うとも言えない。
「勿論だ」
鷹野は一瞬にやっとすると独り言を呟いてテーブルに上半身を乗り出した。
「ああー、一億ほしい」
この世は金だ。そんな言葉をニュースで聞いたのを思い出した。社会は既に機械化していく中、
生身の物はすべて使えなくなり、機械に操られる人間が増えたこの時代。どんな事があっても金は必要だった。
道を聞いただけで金を強請って来る奴や、すべての行動に金額をつける奴。そう言った環境で育った子供は金という醜いものを早くから知っている。
僕はふぅと一度ため息を吐くと、目をそっと閉じた。まだかまだかと思っていた。大橋に南桐、
それに克也に明彦。今は何処にいてこんな迷宮に迷っているのか。
「ガチャ」
静かな大広間にドアが開く音がした。丁度鷹野の後ろにあるドアからだった。誰だ!
開いたドアから出てきたのは2人の人物だった。
「克也!明彦さん」
「・・・修一!」
克也は真っ先に僕の顔を見てほっとした顔をした。明彦も一瞬僕の顔を見て周りを見渡していた。
2人共テーブルに近づきながら辺りをキョロキョロしている。
「修一、ここがゴールか?」
「・・・まあそんな所だな。お前らは助かったというわけだ」と、鷹野が僕より先に喋った。
それを聞いて僕とおなじ気持ちになったのだろうか、克也はむすっとしたが、昔から克也の性格は知っていた。
喧嘩をよくして、嫌いな奴にはメンチをきる性格だ。
「・・・あ?お前誰だ?」
静かに席に着いく明彦とは別に、克也は立てったまま鷹野を睨んでいる。
「へっ、ここにも一人血の気が多い奴がいたか。俺の名前は鷹野正治だ」
「あっそ・・・」
無視するように克也は僕の隣に座った。大抵の場合克也のこう言った行動は、その相手とあまり口論になりたくない時にする行動だ。
僕の横に座るや否や克也は小さい声で話し掛けてきた。
「修一、お前いつここにたどり着いたんだ?俺達彷徨ってばかりだったけど知らないうちに変な階段を上ったらここに来たんだが・・・」
「ああ、僕もそうだ。彷徨った挙げ句、階段を上ってここに来た」
「いつここに来たんだ?」
「たしか克也より数分早くだ。ここに来てそんなに時間は経ってないよ」
確かに数分しか経っていないはずだ。この館は時計もないし日の光も差し込まない所だ。
自分の腕時計はここに入った時から動かなくなっている。体内時計もさまざまな異変によって狂っているだろう。
そんな話をしていると僕の右側にある茶色の扉が開いた。
「ガチャ」
顔を半分覗かせている。すぐにこの大広間を確認すると、体を乗り出して出て来た。
見るとそこにはツンツンに頭を立てらした青い学ランの少年が立っていた。いかにも挙動不審の顔をしているが、
下を俯きながらテーブルに近寄ってきた。
「お前も助かったな・・・少年」
鷹野はまるでおちょくる様な口調で言った。ガムを噛みながらなのでくちゃくちゃと鳴る音は気持ち悪い。
「・・・・」
青い学ランの少年は鷹野の言葉に見向きもしないで克也の2つ隣の席に座った。
落ち込んでいるように見えるが目つきが悪いその顔はうるさいなぁと思っている反抗期の顔にも見えた。
「さあさあ、あと何人生き残ってるかな・・・」
やはりくちゃくちゃと音を立てて喋るのはマナー違反だ。汚らしいし鷹野自体気に入らない。
横で克也は自分の身に起きた出来事を話し始めた。最初は自分も体験した不思議な事だったが、
途中大きな熊のはく製やトラのはく製がある小さな通路があったと言った。
確かに今の状況なんでもありだがはく製と来たかと僕は思った。
と、突然場の不陰気が変った。参加者の皆が驚いて周りを見渡した。
大広間自体何も変っていないが、突然クラッシックが流れた。とても緩やかなメロディーでピアノソナタのようだ。
これは一体何の真似だろうか。黒い男が参加者に少しでも落ち着いてもらおうと流したものだろうか。
だがそれは全く違った。ピアノの伴奏中、よく耳を澄まして聴いて分かった。
ポロロンと流れる中どこか遠くの方で、男性が何かを呟いているのが聴こえた。
【・・・三分・・・・・。三分五十秒・・・・・。三分四十秒】
なにやら秒数を数えている。何故にもこんなに小さな声で言うのだろうか。
しかもクラッシックを流してまで。僕のほかに鷹野もその声に気がついたらしく険しい顔を一瞬見せた。
一体なぜ?なぜ秒数を数えるんだ。どんどん少なくなっていく。
「・・・あと三分か・・・」
鷹野が呟く言葉に閃いた。まさか、この秒数は制限時間?三分を過ぎてここに来てもゴールにならない。
つまりはあと三分以内に大橋が来なければ脱落になってしまうのか?
高鳴る不安を押えながら僕はひたすら大橋が現れるの待った。一体どの扉から出てくるのか?
そしてどんどんとクラッシックの中から流れる男性のカウントダウンは数が小さくなっていく。
鷹野はやはり声の謎を解いただけであとは自分はもう既にゴールしたから関係ないと言うようにへらへらとしている。いい気なものだ。
その他の参加者は気がついているのかどうか分からない。青い学ランの少年はずっと下を向いていて気がついているのかどうか分からないし、
明彦は目が細くて腕を組んでじっとしているからこれも分からない。大広間でよく見ると明彦が結構な年だと言う事がわかる。
自分の親と同じぐらいだ。でも人柄がとても良さそうな人だ。
【二分・・・・。一分五十秒・・・】
奇妙な男の声は冷静にカウントダウンしていく。0になったら一体何が起こるのか。そして大橋は来るのか。
【一分三十秒・・・】
「ガチャ」
静かに左の方にある扉が開いた。――――大橋!
心の中で叫んだ僕はつい言葉にして叫んでいた。その扉から出てきたのは正しく大橋と南桐の姿だった。心のそこから安心した。
【一分・・・。五十秒・・・】
間に合った。ほっとため息を吐く僕のほうに大橋と南桐が近づいてきた。大橋、南桐とも目立つ傷はなく、これと言って心配する点はなかった。
「お互い無事だったようだな稲葉君」
「はい」
大橋は自ら僕の左隣(克也とは逆)に座った。少しドキッとしたがすぐに南桐が僕の背後から立ったまま話し掛けてきた。
「稲葉君。いつから俺達と離れたんだ?」
「ええ、僕もあまり覚えてないんですが、最初に逆の方向に行く所までは一緒だったんですが、
なぜか歩く度に南桐さんや大橋さんと離れてしまって、僕が大橋さんに声を掛けたんですがなぜか見えないようで、その瞬間どこかに移動してました」
すると大橋が僕の方を見て不思議そうに言った。
「え?やっぱり稲葉君が叫んだの?気のせいだと思ったけど何度か稲葉君の声が聞こえたの。けど声がする方は誰もいなかったわ・・・」
「・・・・うん、今考えても仕方ない。こうやってみんな会えたんだ・・・まあいいだろう」
南桐は落ちついた口調でまとめた。たしかに現在がよければそれでいいかもしれない。
だが本当にいいのだろうか。これから先、もっと違った意味で大変な事が起きそうな予感がした。
【・・・・0】
男のカウントダウンが0になった瞬間、クラッシックもぷっつり切れて聴こえなくなった。やはり橋川は死んでいたのだろうか。その時だった。
「あの帽子と女が脱落か・・・」
鷹野がニヤニヤしながら言った。このゲームを楽しんでいるようだ。鷹野の言葉で僕も今気がついた。
確かに橋川もそうだが、あの危険な女もこの大広間にいない。
「みなさんお疲れ様です。疲れたのでしたら皆さんの前にあるコーヒーでもお飲みください・・・」
突然何処からともなくあの黒の男の声がした。まただと言わんばかりに参加者の皆は辺りをキョロキョロした。
それもそのはず、すぐ近くでその声は聞こえるのだ。実際僕も背後にいるように聞こえる。しかし背後には南桐がいる。
「ただ今で第三ゲームは終了しました。いよいよ最終ゲームです。今いない参加者の皆さんは・・・、
一生第三ゲームのステージで彷徨い続けるでしょう。第三ゲームで脱落した人は、橋川さんに飛山さんの二名でした。
残りの参加者は七人です。さてこれから最終ゲームに移りますが、これに優勝すると一億円差し上げます。
では少し休憩を取りながら出でよいので聞いてください」
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